耳鼻と臨床
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39 巻, 2 号
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  • 酒井 昇, 永橋 立望, 古田 康, 千田 英二, 目須田 康, 犬山 征夫, 西澤 典子
    1993 年 39 巻 2 号 p. 135-138
    発行日: 1993/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    片側反回神経麻痺による声門閉鎖不全の手術としてはいろいろな術式があるが, 一色の甲状軟骨形成術1型が代表的なものである. 最近われわれは本手術で使用されるシリコン模の代わりにセラミックを応用する新しい方法を考えた. この方法ではすでに報告されているようなシリコン使用に伴う生体への種々の副作用を防ぐことができるという利点がある。われわれの方法は簡単であり, さらにシリコンの固定と創面の止血の目的でフィブリン糊を使用することは有効なものと思われた. この新しい方法を採用し好結果を得た2症例を, 文献的考察を加えて報告した.
  • OS-oil処置鼻粘膜過敏性モデルモルモット
    谷本 秀司, 奥田 稔, 石田 祐子, 藤倉 輝道, 池田 雅一, 浪松 昭夫, 吉村 弘之, 呉 晃一郎
    1993 年 39 巻 2 号 p. 139-142
    発行日: 1993/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    われわれは, 先にステンレス研磨用のOS-oilの反復鼻内注入により鼻アレルギー研究に有用な非特異的鼻粘膜過敏性モルモット実験モデルを作製できることを報告した.
    今回は, この鼻粘膜過敏性モデル動物を用い, ノイロトロピンの効果についてケトチフェンを対照として検討した. その結果, ノイロトロピンはメサコリン誘発反応の抑制ならびに抗原誘発による鼻症状の抑制効果を示した. 一方, ケトチフェンでは, メサコリン鼻粘膜過敏性の改善は見られず, 抗原誘発による鼻アレルギー症状の改善効果のみ認められた.
    ノイロトロピンの鼻アレルギーに対する作用機序の一つは, 抗原抗体反応の抑制や化学伝達物質の遊離抑制作用に加えて, 鼻粘膜における非特異的過敏性を正常化するものと推察された.
  • 新川 敦, 三宅 浩郷, 木村 栄成, 秋田谷 直, 出井 教雄, 澤木 修二, 佐藤 博久, 竹山 勇, 中島 博昭, 中島 久美, 越智 ...
    1993 年 39 巻 2 号 p. 143-151
    発行日: 1993/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    耳鼻咽喉科領域感染症に対するAztreonam (AZT) の有効性と安全性を検討した.
    AZTは1日1g~4gを平均6日間投与し, 主に術後患者に投与を行い臨床的効果の判定を行つた. 検討対象とした対象疾患は慢性副鼻腔炎57例, 慢性中耳炎40例, その他耳鼻咽喉科感染症41例の計138例であつた. 臨床効果は主治医判定において慢性副鼻腔炎で86%, 慢性中耳炎で90%, その他感染症で80%, 総合で86%であつた. AZTがグラム陰性菌に対してのみのスペクトラムをもつ薬剤であるため, グラム陽性菌に対する抗生剤の併用を行つたものが66例と約半数であつたが, 併用抗生剤群において高い著効例を多く認めた. 副作用は2例が軽度の下痢, 1例に発疹が認められた. また, 臨床検査値異常は主治医から4例が報告されたが, 化学療法学会の検査値異常判定基準においては該当するものはなかつた.
  • 犬童 直哉, 鮫島 靖浩, 増田 敦彦, 増山 敬祐, 石川 哮
    1993 年 39 巻 2 号 p. 152-156
    発行日: 1993/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    まれな疾患である気管原発多形腺腫症例を経験したので報告した. 症例は41歳, 男性で, 1年半来の喘鳴と軽度呼吸困難を主訴に当科を受診した. 喉頭ファイバーにて声門下に表面平滑で広基性の粘膜下腫瘍を認め, 輪状軟骨下端から第2気管輪までの後壁に位置していた. 気管切開後, 経皮的に腫瘍を摘出した. 組織学的には多形腺腫であった. 術後経過は良好で現在までのところ再発は見られていない. 本症例は, 本邦で9症例目の報告である.
  • 古謝 静男, 糸数 哲郎
    1993 年 39 巻 2 号 p. 157-160
    発行日: 1993/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1978年から1985年までの8年間に琉球大学医学部耳鼻咽喉科で一次治療の行われた中咽頭癌患者38例を検討した. 進行度はStageI, II, III, IVがそれぞれ5例, 5例, 11例, 17例であった. 治療は36例に放射線療法と化学療法の併用, 2例に手術と放射線療法の併用が施行されていた. 放射線療法は50~80Gyの照射量であつた. 化学療法はブレオマイシンが最も頻繁に併用されていた. 5年粗生存率はStageI II III IVがそれぞれ80%, 60%, 18%, 24%であり, 全体で34%であつた.
    25例が死亡し19例は原発巣死であつた. 中咽頭癌は比較的放射線感受性であると考えられており, また解剖学的および機能的特性から外科的治療が第一選択となることは少ない傾向にあるが治療成績を向上させるためには進行例に対して姑息的治療にとどまらず外科的治療を考慮し, 術後の形態機能の再建に努力することが重要と考えた.
  • 長山 郁生, 大尾嘉 宏巳, 伊藤 真人
    1993 年 39 巻 2 号 p. 161-164
    発行日: 1993/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    67歳女性の前頸部に生じたvenous aneurysm症例について報告した. CT, 血管造影, 超音波検査などの画像診断を行いvenous aneurysmと診断したが, 診断上超音波検査は有用であり, VTR記録, およびカラーdoppler検査から血流との関係を明かにすることができた. 画像診断によれば, 内頸と外頸静脈に交通がみられ, 交通枝に腫瘤が生じたものであることが示唆された. 手術時にこれらの所見は確認された. 本疾患の成因については, おおくの仮説があるが, われわれはこのような解剖学的異常所見により腫瘤が生じたものであろうと推測した. 内頸静脈と外頸静脈がこのような交通を持つことはまれである. さらに, 本腫瘤の成因として, 肩甲舌骨筋が関与し得る可能性について, 解剖学的な異常所見をもとに論じた.
  • 松根 彰志, 今村 洋子, 松永 信也, 清田 隆二, 古田 茂, 大山 勝
    1993 年 39 巻 2 号 p. 165-169
    発行日: 1993/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1984年から1991年までの8年間に当院耳鼻科咽喉科で経験した7例の外耳道良性腫瘍について病理組織学的検討を行つた. 症例は腺腫3例, 骨腫1例, 色素性母斑1例, Histiocytosis1例, 類皮嚢腫1例であつた. 腺腫の3例は嚢胞形成や腺管の発育程度などに差が認められるものの, すべてのアポクリン分泌像を呈し耳垢腺由来と考えられた. また, いずれにおいても摘出術後の再発は認められない. 外耳道Histiocytosis及び類皮嚢腫は, 他の5例が比較的頻度の高いものであるのに比べ, 従来の報告ではあまり認められていないまれなものであつた. 今回経験した外耳道Histiocytosisは局所に限局し再発傾向は認められず, 臨床的に良性と考えられた.
  • 岩田 重信, 中西 泰夫, 山際 幹和
    1993 年 39 巻 2 号 p. 170-180
    発行日: 1993/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    塩化リゾチームの効果が不十分であつた咽喉頭異常感症女性患者37名に対してメサルモン®-F錠 (3錠/日) を2~4週間投与し, 以下の成績を得た.
    1) 咽喉頭異常感症状の全般改善度は, 著明27%, 中等度30%, 軽度16%であり, とくに, つまつた感じ, つばがひつかかる感じ, 乾燥感は推計学的に有意に改善した. 随伴症状の全般改善度は, 著明21%, 中等度18%, 軽度9%で, とくに, 倦怠感, 頭痛・頭重感, 肩こりに対する高い効果が推計学的にも示された. 総合有用度は, 極めて有用32%, 有用32%, やや有用14%であつた.
    2) 副作用と思われる軽度の口渇が1例 (3%) でみられたが, 投薬続行中に消失した. 3) 項目別に咽喉頭異常感に対する効果をみると, CMI深町分類で神経症的傾向が低い例, 30歳代以外の例, 月経が順または無い例で高い効果が得られた.
    以上より, メサルモン-F錠は抗炎症剤の効果の足らない点を補うことが判明した.
  • 成田 七美, 吉原 俊雄
    1993 年 39 巻 2 号 p. 181-185
    発行日: 1993/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    78歳女性の右口腔底Adenoid cystic carcinomaの1例を報告した. 本腫瘍は唾液腺に高頻度に認められとくに顎下腺, 小唾液腺における発生率は高いとされる. 緩慢な発育を示すが, 局所再発や転移も多く悪性度の高い腫瘍であり, 病理組織像より節管型, 管状型, 充実型に分けられる. 予後が病理組織型と密接に関係するとされ, 充実型の予後が悪く, 管状型の予後が一番良いとされる. 本症例は鯖管型から充実型であり, 腫瘍の存在場所より舌下腺あるいは小唾液腺由来と考えられた.
    治療は腫瘍の全摘手術および上頸部郭清術を行い, 術後6カ月を経過した現在も再発の兆候は認めていない. 腫瘍摘出後, 光顕ならびに電顕的な検討を加え, 文献的考察を行つた.
  • 館野 秀樹, 浦尾 弥須子, 中川 秀樹
    1993 年 39 巻 2 号 p. 186-189
    発行日: 1993/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    頸部に発生する先天性痩孔および嚢胞は, 大部分の症例は第二鯛裂由来のものであり, 第一鮒裂由来のものはまれで, 本邦では約40例の報告である. 今回われわれは第一鯛裂に由来すると考えられる症例を経験したので報告した. 症例は45歳女性で, 嚢胞は下顎よりやや下方, 胸鎖乳突筋前方に本体を有し, そこより上方へ伸びる管腔が耳下腺組織内を貫通し, 顔面神経の内側を通り, 外耳道底部へ盲端として終わつており, WorkのいうII型に相当するものと思われた. 術前診断として, CTスキャン, 超音波断層撮影などの画像診断法が有用であり, 嚢胞摘出に当たつては, 顔面神経との位置関係の確認にとくに留意した.
  • 千田 英二, 佐藤 信清, 福田 諭, 川浪 貢, 柏村 正明, 犬山 征夫
    1993 年 39 巻 2 号 p. 190-195
    発行日: 1993/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    プロスタグランディンE1の静注投与療法は突発性難聴に対して用いられている. リマプロストはプロスタグランディンE1誘導体としては初めての経口製剤である. われわれはリマプロストを突発性難聴67例に経口投与し, プロスタグランディンE1の投与を受けていない79例と比較検討した. 厚生省研究班による診断基準, 改善率, 治癒率を用いて比較したが, 投与例と非投与例との間に統計学的有意差は認めなかつた. また, リマプロストを投与した症例中, 治癒した16例について初診病日, 初診時聴力, 固定時聴力, 聴力型などについて検討したが一定の傾向を認めなかつた. なお, 重篤な副作用はなかつた.
  • 田中 文顕, 鮫島 靖浩, 五十川 修司, 渡辺 隆, 増山 敬祐, 石川 哮, 杉 宣宏, 福田 功一, 東家 倫夫
    1993 年 39 巻 2 号 p. 196-202
    発行日: 1993/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    下咽頭に発生したまれな癌肉腫の2症例を経験した. 症例1は嚥下障害を訴える52歳の女性で, 喉頭ファイバーおよび下咽頭造影にて下咽頭後壁を基部とし咽頭腔に充満する腫瘤があり右咽頭側切開にて後壁と共に摘出を行つた. 組織は「いわゆる癌肉腫」の診断であつた. 症例2は75歳の男性で嚥下障害と呼吸困難を主訴とし, 喉頭ファイバーおよび頚部CTにて右梨状陥凹に茎を有し外向性発育の腫瘤を認めた。手術は輪状後部への浸潤を認めたため喉頭と共に腫瘍摘出を行った. 組織像は「癌肉腫」の診断であつた. 2例とも現在のところ再発, 転移を認めていない. 現在までに本邦での下咽頭癌肉腫の報告は本症例を含め9例であつた.
  • 齋藤 滋, 玉城 昇, 中村 真理子, 小杉 忠誠
    1993 年 39 巻 2 号 p. 203-207
    発行日: 1993/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    鼻アレルギー患者を対象に, 特異的減感作療法開始前と治療中のPAFによる血小板凝集能, さらには血清IgE値, IgG値, 血中好酸球数を測定した. その結果, PAFによる血小板最大凝集率と各種パラメータとの間に統計学的に有意な相関はなかつた. しかしながら, 減感作療法開始前のPAFによる血小板最大凝集率は, 血清IgE値およびIgG 値が高い症例で亢進する傾向を認めた. また, 減感作療法中に, 血小板最大凝集率と血清IgE値およびIgG値との相関関係は正から負へと変化した. これらの結果は, 治療前にはIgE, IgGが血小板膜上のリセプターを介して血小板を刺激するのに対して, 減感作療法中には, IgE, IgGによる血小板への刺激が減少するために起こるのではないかと推察した. 以上より, PAFによる血小板凝集能の測定は鼻アレルギーの特異的減感作療法の効果判定の指標になり得ると推察した.
  • 久保 伸夫, 川村 繁樹, 池田 浩己, 熊沢 忠躬
    1993 年 39 巻 2 号 p. 208-213
    発行日: 1993/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    鼻過敏症の実験的モデル動物であるトルエンジイソシアネート (TDI) 感作モルモットの鼻粘膜に, 局所投与の目的に新たに開発された合成糖質コルチコイドであるプロピオン酸フルチカゾンを投与し, 鼻粘膜局所に含有されるヒスタミン量の変化を経時的に検討した. TDI感作によりヒスタミン含有量は約4倍に増加したが, フルチカゾン前投与によりこの増加は約1/2に抑制された. またこのフルチカゾンの効果は, 用量依存的で, 同量のベタメサゾンと同程度であつた. さらに, ヒスタミン量はTDI投与後30分で急速に減少し, 24時間以内に徐々に回復した. フルチカゾンはこのヒスタミン量の減少に対しても抑制効果を示した. この結果より, フルチカゾンの鼻過敏症への作用機序には, 鼻粘膜局所におけるヒスタミン含有細胞の集積の抑制あるいは個々の細胞のヒスタミン含有量の低下と肥満細胞からの遊離の抑制といつた複数の機序が関与していることが示唆された.
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