抄録
過去3年間 (1989-1991年) に外来受診した65歳以上の高齢者は297例 (平均年齢73.5歳) で, これは同時期の外来受診総数の11%にあたる. めまいと診断された症例は13例であつたが, これら症例に脳梗塞54例, 筋収縮性頭痛41例, 椎骨脳底動脈不全症36例を加えた144例において, “めまい”の実態につき調査した. “めまい”を主訴に受診した患者は71例 (高齢者外来総数の2.6%) であり, 症例数としては椎骨脳底動脈不全症35 (49%), めまい13 (18%), 筋収縮性頭痛9 (12%) 脳梗塞8 (11%), 脳幹梗塞6 (8%) であつた. これら患者の50%以上に心血管系の合併症を有していた. “めまい”の性状は, 筋収縮性頭痛では浮動感が, “めまい”では頭位変換性が特徴的であつたが, その他では回転性めまい以外のdizziness症状が多岐にわたつてみられた. 高齢者の“めまい”は, 加齢に伴う血管障害, 内耳障害そして心気症などを背景にして出現し複雑な病態を呈している