耳鼻と臨床
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39 巻, 5Supplement2 号
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  • 水越 鉄理, 渡辺 行雄, 中川 肇, 浅井 正嗣, 大橋 直樹, 將積 日出夫
    1993 年 39 巻 5Supplement2 号 p. 745-749
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    健康な高齢者について, 静止直立姿勢時の体平衡機能を中心に, 視覚入力および振動による体性感覚入力に対する重心動揺の応答を青壮年者と比較し, 高齢者の体平衡の特徴を追求し, 次の結論を得た.
    1) 開眼直立姿勢時の重心動揺は高齢者で有意に増大し, 前後動揺が著明であつた. 視覚寄与 (開閉眼) によるロンベルグ比 (閉眼/開眼) は動揺面積, 軌跡長の増大を示したが, 年齢層別有意差はなかつた.
    3) 重心動揺の周波数帯域 (0.1~3.96Hz) でのパワースペクトラム密度は年齢と関係なく, 閉眼により増大し, 視覚入力の影響が強くみられた.
    4) 高齢者では個体差が著しく, 振動負荷の影響を受けず, わずかな増大のみであつた. 以上より, 高齢者では体性感覚系の影響は低下し, より視覚系, 前庭迷路系の情報に頼ることが判明した.
  • 武田 憲昭, 佐藤 信次, 肥塚 泉, 林 治博, 荻野 仁, 松永 亨
    1993 年 39 巻 5Supplement2 号 p. 750-756
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    加齢にともなう平衡機能の変化を調べる目的で, まず回転検査による前庭-動眼反射の利得を高齢者群と若年者群で比較したが差は認められなかつた. 次に, pseudorandom acceleration回転刺激中の回転速度の変化の認知率を検討したところ, 高齢者群では著明に低下していた. さらに, 中心性および偏中心性回転刺激において被検者に暗算を負荷した場合と地上の想定指標を固視するように指示した場合で前庭-動眼反射の利得を比較した. その結果, 指標を想定することによる前庭-動眼反射の利得の増加は高齢者群で劣つていた. 以上の結果から加齢による反射レベルの機能低下はほとんど認められず, 高齢者の平衡障害は高次中枢における前庭情報の求心性処理機能の低下や, 高次中枢が空間認知に基づいて前庭-動眼反射を調節する遠心性制御機構の異常に基づくものと推定した.
  • 脳幹症候との関連から
    渡辺 正樹, 高橋 昭, 新畑 豊, 茂木 禧昌, 古瀬 和寛
    1993 年 39 巻 5Supplement2 号 p. 757-762
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    MRIによりT2強調像で高信号を呈する橋部信号例254例を検出し, MRIおよびMR angiography (MRA) を用いてその臨床的意義を検討した. 橋部高信号例は症候性のものが66例, 眩暈のような一過性の不定愁訴例が62例認められた. 橋部高信号例では, MRI におけるテント上の高信号域の合併, MRAにおける脳底動脈蛇行, 椎骨動脈左右差の頻度がいずれも橋部に異常影を認めない対照例より多かつた. MRI上の橋部高信号は広汎な動脈硬化を基盤にして出現する画像上の異常所見で, MRAは眩暈などの補助検査として有用であると考えられた.
  • 高齢者の歩行矯正訓練とQOL改善
    高安 劭次, 香取 早苗
    1993 年 39 巻 5Supplement2 号 p. 763-770
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    平衡機能の加齢変化を生活行動の基本である「歩行」から全体像として評価するために, Gaitcorderによる歩行分析と肉眼観察による歩容の分析を実施し両者を比較検討した.
    正しい歩行姿勢の健康成人に高齢者特有の悪い姿勢で歩行させると分析結果が悪化し, 高齢者歩行には平衡機能の「質」の低下の存在することが判明した. また歩行姿勢の欠陥の中には矯正訓練で改善出来る部分が多く, その改善結果は歩行分析成績や生活支障度にも有意の改善をもたらした.
    高齢者歩行で得られた対称性, とくに立脚時間の対称性 (左右差) の数値は, 健康成人の最悪歩行姿勢で得られた数値を遙かに超えていた事から, 平衡機能の「加齢変化」を評価する指標として有用であると判明した. その下限は, 立脚時間で0.015, 遊脚時間で0.012, 両脚支持時間で0.03であった.
  • 横山 徹夫, 植村 研一, 龍 浩志, 片桐 伯真, 桧前 薫, 西澤 茂, 今村 陽子, 白坂 有利, 野末 道彦
    1993 年 39 巻 5Supplement2 号 p. 771-774
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    過去3年間 (1989-1991年) に外来受診した65歳以上の高齢者は297例 (平均年齢73.5歳) で, これは同時期の外来受診総数の11%にあたる. めまいと診断された症例は13例であつたが, これら症例に脳梗塞54例, 筋収縮性頭痛41例, 椎骨脳底動脈不全症36例を加えた144例において, “めまい”の実態につき調査した. “めまい”を主訴に受診した患者は71例 (高齢者外来総数の2.6%) であり, 症例数としては椎骨脳底動脈不全症35 (49%), めまい13 (18%), 筋収縮性頭痛9 (12%) 脳梗塞8 (11%), 脳幹梗塞6 (8%) であつた. これら患者の50%以上に心血管系の合併症を有していた. “めまい”の性状は, 筋収縮性頭痛では浮動感が, “めまい”では頭位変換性が特徴的であつたが, その他では回転性めまい以外のdizziness症状が多岐にわたつてみられた. 高齢者の“めまい”は, 加齢に伴う血管障害, 内耳障害そして心気症などを背景にして出現し複雑な病態を呈している
  • 末梢性前庭障害患者の検査値と正常標準値について
    徳増 厚二, 浅野 和江, 藤野 明人, 吉尾 知
    1993 年 39 巻 5Supplement2 号 p. 775-787
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    末梢性前庭障害と診断された49歳以下の若年群80例と60歳以上の高齢群43例について, 平衡機能検査の結果を比較した. 眼振出現率は若年群65.3%, 高齢群60.5%であり, 視標追跡検査の1周期に出現したsaccade数と振幅, ならびに両脚閉足開眼直立の重心動揺総軌跡長は, 高齢者で有意に増加した. 正常の50歳代, 60歳代の平衡機能検査の標準値を求めた. 50歳代と60歳代では, 視標追跡検査の1周期に出現したsaccade振幅にのみ有意差があつた. 視標追跡検査のsaccadeと開眼直立の身体動揺の増加は加齢変化であり, 小脳における加齢による退行変性を推定した.
  • 吉川 茂樹, 上村 卓也, 松永 勝也
    1993 年 39 巻 5Supplement2 号 p. 788-791
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    迷路機能障害を有する65歳以上の高齢者18例の直立時の平衡機能を, pedo-posturographyを用いて開眼. 30秒間の測定を行つた. その結果以下のことがわかつた. 重心動揺軌跡長は経過とともに短くなつた. 足底圧の左右差は一側迷路機能低下例では, 発症後5年以内の例で障害側の, 5年以上の例で健側の足底圧が大となる傾向がみられた. 両側迷路機能低下例では発症後6カ月以内め例にCPのより高度な側の足底圧が大であつたが, 5年以上の例では病的左右差はほとんどみられなかつた. これらは65歳未満の迷路機能低下例と同様の傾向であつた, しかし踵から重心までの距離が足底接地部の前後方向に占める割合を示すG%は一側迷路機能低下例では病的に正常範囲より小さい値を示し, 動揺中心の後方への移動が示唆された. 両側迷路機能低下例では1例のみ正常範囲にあり, 他の例は正常範囲より大きいものと小さいものに二分され, 動揺中心の前後への移動が示唆された.
  • 稲村 欣作, 横山 義昭, 中野 美恵子, 河合 学, 間野 忠明, 岩瀬 敏
    1993 年 39 巻 5Supplement2 号 p. 792-798
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    老年者における思春期青年期のスポーツ競技生活の有無とその後の運動実施継続の有無によつて生ずる直立保持機構の差異を, 重心動揺測定による平衡機能検査と能動的および準受動的循環機能起立検査を使用して検討した. その結果, 高運動実施群は平衡機能の内でも特に筋制御において低運動実施群より優れ, また, 弾性のある血管を持つとともに交感神経系の反応性も高く, より若い体を保持していることが明らかになつた. このことから, 思春期青年期においての運動による体力の増強と生涯を通じての継続的かつ適度な運動があいまつて, ヒトの基本的な機能である立つ能力 (直立能力) の老化防止に有効なことが示唆された.
  • 関 守広, 石田 明允, 小松崎 篤
    1993 年 39 巻 5Supplement2 号 p. 799-805
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    われわれは足踏み検査 (福田) を時間的に分析することを目的にStepping recorderを開発した. 今回、急性片側前庭障害者を対象に足踏み運動を実施し若干の知見を得たので報告する.
    [対象] 若年者グループ10例, 高齢者グループ6例の急性片側前庭障害者を対象とした.
    [方法] リズム (0.8~1.6Hz) に合わせて足踏み調査を行い, Stepping recorderにて計測し片脚支持時間 (single support time) と両脚支持時間 (double support time) をパラメータとして検討した.
    [結果] 若年者グループではほぼ正常な足踏みパターンが発症後3カ月後にみられたが, 高齢者グループでは6カ月要し回復の遅れがみられた.
    [考察] 高齢者では小脳系の老化によると考えられるリズム対応能の低下がみられ片側前庭障害の回復過程を評価するうえで前庭障害の差とともに加齢を考慮する必要があると考えた.
  • 加齢による変化について
    乾 洋史, 菊岡 政久, 藤田 信哉, 松永 喬, 吉井 致
    1993 年 39 巻 5Supplement2 号 p. 806-810
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    遺体脳を用いて椎骨脳底動脈系の血管走行の観察, 内頸動脈 (ICA) と椎骨動脈 (VA) の血管径の計測を行い, 加齢による血管径の変化を検討した.
    1. 前下小脳動脈 (AICA), 後下小脳動脈 (PICA) の分枝のvariationは8種類に分類できた. VA, ICA共に血管径は左側のほうが太かつたが加齢による変化は認められなかつた.
    2. 加齢による血管壁の肥厚, 血管内腔の狭小化はVAで著明に認められた. 血圧が一定の場合, 椎骨動脈系の血流量は内頸動脈系の血流量に比して減少し, また椎骨動脈系は血圧変動の影響を容易に受け易いことが考えられた.
    3. 病理学的観察で, ICA, VAの加齢による血管壁の変化は内膜病変が主で, 内膜の膠原線維の析出, 硝子化が認められた.
    4. 高齢者のめまい疾患を考える場合, 加齢による解剖学的変化も考慮し原因を検索する必要があると考えられた.
  • 山中 敏彰, 藤田 信哉, 上田 隆志, 乾 洋史, 南 有紀, 松永 喬
    1993 年 39 巻 5Supplement2 号 p. 811-816
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    椎骨動脈血流動態に対する血圧および血清脂質の影響について調べるために, 平均動脈圧, 血清脂質およびSchellong Testによる血圧変動を測定し, これらの値と超音波ドップラー法を用いて測定した椎骨動脈血流速度との関係について検討した. 対象は椎骨脳底動脈循環不全症 (VBI) とし, メニエール病を対照にして検討した. その結果, VBI において, 血圧変動と血流速度の左右差との間に正の相関性, 血清脂質と血流速度およびその左右差に負の相関性が認められた. またSchellong Test陽性例のほうが陰性例に比べて左右差は大きく, 血流速度は低かつた. 一方, メニエール病では, 血圧変動および血清脂質が椎骨動脈速度に影響する結果は得られなかつた. このことから血圧および血清脂質による椎骨動脈血流動態への影響がVBI発症の機能的病因の重要な要素のひとつになつていると示唆される.
  • 藤田 信哉, 上田 隆志, 康 勲, 山中 敏彰, 乾 洋史, 南 有紀, 松永 喬, 和田 佳郎
    1993 年 39 巻 5Supplement2 号 p. 817-820
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    奈良医大耳鼻咽喉科外来を受診しためまい患者のうち, 超音波ドップラー検査を施行した65歳以上の高齢者は116例であつた (男47例, 女69例, 65歳-83歳, 平均71歳). 65歳以上のめまい患者 (以下高齢者) と65歳未満のめまい患者 (以下若年者) の年齢層別の頻度, 臥位血圧, シェロングテスト, 血清脂質を比較した.
    年齢層別頻度では, 高齢者は, 中枢性疾患や眩量症に左右差群, 低下群などの病的群が多かつた. 血圧では, 高齢者は, 各疾患群ともに高血圧傾向を示したが, とくに全身性疾患においてその傾向が強かつた. シェロングテストでは, 各疾患群ともに高齢者と若年者の間で陽性率に差はなかつた. 血清脂質では, 高齢者の方が若年者と比べて有意差はなかつたが高値を示した. とくに低下群においてその傾向が強かつた.
  • 肉眼的観察とポリグラフ記録による検討
    白戸 弘道, 小川 晴子, 加藤 雅也, 水田 啓介, 伊藤 八次, 宮田 英雄
    1993 年 39 巻 5Supplement2 号 p. 821-828
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    高齢者の歩行 (開閉眼) を (1) 肉眼的観察 (10m自由歩行) と (2) ポリグラフ記録 (15m自由歩行) で検討した. 対象はめまい・平衡障害の既往と訴えのない65歳以上の高齢者111名である, このうち, ポリグラフ記録を行い得たのは19名である.
    (1) 肉眼的観察では接床. 離床の歩行リズム, 上肢の交互の振りが円滑でないものが加齢とともに増加し, とくに閉眼時に著しかつた, また, 所要時間, 歩隔, 偏倚距離は加齢とともに増加傾向にあつたが, 歩調, 歩幅は逆に低下傾向にあつた.
    (2) ポリグラフ記録では頭部左右・前後運動が不規則になりやすく, ひらめ筋の筋活動パターンも遊脚期に筋放電を認めるなど不規則であつた.
    これらの歩行変化は筋骨格系の加齢変化とともに自己受容性姿勢制御への加齢による影響が強いためと考えられた.
  • 水田 啓介, 佐久間 伸二, 伊藤 八次, 白戸 弘道, 沢井 薫夫, 青木 光広, 宮田 英雄
    1993 年 39 巻 5Supplement2 号 p. 829-833
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    視運動性眼振 (OKN) の緩徐相速度は2つの機構から構成されている. 1つは短い時定数を持ち初期急速増加を形成し, 追従機構が関与する. 他の1つは長い時定数を持ち緩徐増加と視運動性後眼振 (OKAN) を形成し, 速度蓄積機構が関与する. 高齢者のOKN の緩徐相速度の低下がどの機構の低下があるかを検討する目的で, 高齢者に30°/sec, 60°/sec, 90°/secの等速度視運動刺激を加え, 初期急速増加 (IR), 最高定常時緩徐相速度 (SS), OKAN第1打の緩徐相速度 (SR), OKANの時定数 (TC) を測定した. 高齢者では60°/sec以上で若年成人よりSSが低下した例が多かつた. SSが低下した例ではIRの低下例が多く, SRの低下例は少なかった. また, SRが低下した例は必ずIRが低下していた. これらの結果より, 高齢者では主に追従機構への加齢の影響によりOKN 緩徐相速度が低下すると考えられた.
  • 特に高年齢中枢性めまい患者における検討
    浅井 美洋, 梅村 和夫, 野末 道彦
    1993 年 39 巻 5Supplement2 号 p. 834-839
    発行日: 1993/11/01
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    50歳以上のめまい患者37例を対象として日常生活動作の自覚的支障度を調査し, 障害部位の違いによる影響を検討した. その結果, 中枢性めまい患者が, より支障を自覚しやすい傾向が認められた. また高年齢中枢性めまい患者11例ならびにドック検診を受けた健常高年齢者22名から成る群において重心動揺ならびに歩行時間・距離因子と自覚的支障度との相関について検討した. 日常生活支障度と有意に相関する測定値として開・閉眼時の直立時重心動揺面積, 普通速歩行における開眼時歩行速度および開・閉時の立脚・遊脚期比があげられた. これらの結果から高年齢中枢性めまい患者の日常生活支障度は立位平衡機能の悪化だけでなく, 下肢筋力低下の影響も受けている可能性があると推測した.
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