抄録
喉頭内損傷はまれであるが, 医原性によるものが多いと言われる. そこで, 当教室過去5年間の喉頭内損傷の統計観察を施行した. 症例は78例 (男性56例, 女性22例) で, 喉頭内損傷の原因は熱傷1例, 喉頭異物4例 (魚骨), 披裂関節脱臼3例, 喉頭内芽腫11例, 喉頭気管狭窄9例, web形成5例, 術後性の反回神経麻痺45例, うち挿管性麻痺は12例, 甲状腺術後の麻痺24例, 胸部内手術後7例, 頸部術後2例であつた. このうち, 広義での医原性と考えられる症例の頻度は73例, 94%の高頻度であり, 内視鏡検葦や挿管麻酔下での手術, 特に甲状腺手術時の反回神経麻痺を来さないように, 充分な配慮と患者への術後合併症の説明が必要である. 甲状腺手術は腫瘍の性状が異なる点や, 反回神経分枝の末梢走行異常と下甲状腺動脈の走行異常の高いことから, 甲状腺手術後の麻痺を喉頭内損傷の分類から除くべきである.