抄録
音声障害症例に喉頭ファイバービデオ検査を施行し, 臨床統計的観察と成因に関する検討を行つた. 反回神経麻痺では134声帯中92声帯 (69%) に弓状声帯縁がみられ, 甲状披裂筋の活動性が乏しい例ほど高頻度に生じた. 声帯レーザー手術後の39声帯中14 声帯 (36%) で弓状声帯縁が観察され, 切除深度が深いほど高頻度に生じた. 声帯溝症の60声帯ではすべてが弓状声帯縁であつた. 明らかな器質的病変のない33例中12例 (36%) に弓状声帯縁が観察され, 高齢者, 男性, 重篤な全身疾患合併例が多かつた.
音声障害を訴えない69名の高齢者に喉頭ファイバービデオ検査を施行し, 男性では 23名中16名 (70%) に, 女性では46名中7名 (15%) に弓状声帯縁が認められた. 器で 質的病変に伴わない弓状声帯縁の発症因子として, 高齢の男性であることと, やせ型の体型, 脳神経疾患の合併, 肺結核の既往が挙げられた.