耳鼻と臨床
Online ISSN : 2185-1034
Print ISSN : 0447-7227
ISSN-L : 0447-7227
Gradenigo症候群の1例
柴田 伊十児太田原 舜一
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 43 巻 5Supplement3 号 p. 726-729

詳細
抄録

Gradenigo症候群は, 中耳炎, 外転神経麻痺, 三叉神経痛を三主徴とするものである. 近年, 耳性頭蓋内合併症は少なくなり, さらに本症候群の発症は稀で最近の30年間で約12例の報告があるのみである. 症例は45歳男性で, 右顔面痛, 耳痛で発症し, 約2週間後に右外転神経麻痺を来した. CTにて錐体尖端部の膿瘍形成が疑われた. 保存的治療を行つたが効果なく, 中耳根本術, 錐体尖端部膿瘍開放術を施行した. 術後約2 週間で神経症状は消失し, 再発は認めていない. 過去の報告でも手術療法がほとんどの例で行われている. 高齢者の場合, 重篤な経過をとることもあり, 膿瘍形成があれば, 早期手術が必要であろう. また本例のように含気化良好耳では, 中耳炎は容易に頭蓋底まで進展することがあり得るので注意を要する.

著者関連情報
© 耳鼻と臨床会
前の記事 次の記事
feedback
Top