抄録
腫瘍が嚢胞状を呈し, 嚢胞との鑑別が困難であつた腺様嚢胞癌を報告した. 症例は59歳男性で, 主訴は数日前よりの左耳下部腫脹であつた. 初診時左耳下腺部に弾性軟, 可動性比較的良好な腫瘤を認めた. 疼痛や顔面神経麻痺はみられなかつた. CTで左耳下腺内に周囲を強くenhanceされる境界明瞭な被膜構造を有する楕円形の腫瘤をみとめた. エコーでは耳下腺内に辺縁がsmoothな楕円形のlow echo lesionをみとめた. 穿刺吸引細胞診では, class Iであつた. 耳下腺腫瘍摘出術を行い, 病理組織検査にて腺様嚢胞癌と診断された. 耳下腺嚢胞疾患のなかには悪性腫瘍があるため, 積極的な外科治療が必要である.