急速に増大し未分化癌が疑われた甲状腺濾胞腺腫の1例

抄録

かねてから存在した甲状腺腫瘍が急速に腫大し始め、甲状腺分化癌の未分化癌への転化が疑われた症例を報告した。腫瘍は、吸引で血液様内容液を認め、画像上気管を高度に圧排するが、被膜を持ち周囲に浸潤は認められなかった。放射線療法が当初考えられたが、切除可能と考え手術を行ったところ、濾胞腺腫の腫瘍内出血による腫大と判明した。文献的に濾胞腺腫は腫瘍内出血を来しやすいと考えられ、本症例のような甲状腺腫瘤の場合、未分化癌だけでなく濾胞腺腫の腫瘍内出血の可能性も考え、十分な鑑別診断が必要であると考えた。