抄録
頭頸部再建術後には軽度の局所感染から致死的となる重症合併症まで種々の合併症を生じることがある。1992年から2002年までの10年間に遊離組織移植を用いて頭頸部再建を行った後に、全身的な合併症を生じた39例を対象に調査を行った。このうち局所の合併症が誘因となって全身的な合併症に発展した9症例について検討を加え報告する。9症例の局所合併症は瘻孔形成2例、局所感染2例、皮弁壊死4例、リンパ瘻1例であった。これらの局所合併症を誘因として髄膜炎1例、頭蓋内膿瘍1例、敗血症2例、DIC 1例、頸動脈破裂3例、肺炎・胸水貯留1例が発症し、うち6症例が死亡した。頭頸部再建においては、その部位的な特徴から局所の合併症が、頸動脈、脳、気道といった重要臓器へ波及しやすく、ときに致死的となる全身合併症の誘因となる。このため術後は十分な観察と合併症の早期発見・治療が重要である。特に照射歴のある症例では創傷治癒の遷延化から重症化しやすいため注意を要すると思われた。