耳鼻と臨床
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口腔・中咽頭癌に対する切除範囲と構音・嚥下機能に関する臨床的検討
高瀬 武一郎
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2005 年 51 巻 6 号 p. 391-402

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抄録
初回治療として口腔・中咽頭癌切除術を行った140名を対象に、術後の嚥下機能・構音機能を検討した。対象患者の内訳は口腔癌112名 (男性80名、女性32名)、中咽頭癌28例 (男性25名、女性3名) で、原発部位、亜部位、T分類による検討を行った。舌、口腔底癌手術での舌可動部1/2未満程度の切除では、再建を行わない“切除のみ”の群で構音機能、嚥下機能は保たれていた。舌可動部1/2以上切除を行った群では、大胸筋皮弁使用による再建の方が、腹直筋皮弁使用例に比べて構音機能が良好であった。舌、口腔底癌の広範切除が必要な患者では、舌根部、口腔底の切除範囲が増大するほど構音機能が低下する傾向が認められた。中咽頭癌切除では、前壁と上壁の切除範囲が増大するほど構音機能、嚥下機能とも低下する傾向が認められた。また術後の構音機能障害が大きいものほど、摂食内容も固形物を摂取できなくなるなどの摂食機能障害が残り、両者の機能障害の相関が認められた。以上の結果から、舌可動部1/2切除未満、舌根部1/2切除未満および口腔底1/4切除未満、中咽頭上壁1/2未満の切除範囲で構音、嚥下能ともに保たれることが分かった。
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