耳鼻と臨床
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[第28回日本嚥下医学会]耳痛で発症し臨床経過からzoster sine herpeteが疑われた舌咽迷走神経麻痺の1例
谷口 洋藤島 一郎前田 広士高橋 博達大野 綾黒田 百合
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2006 年 52 巻 1Supplement1 号 p. S71-S76

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抄録

水痘帯状疱疹ウイルス (varicella-zoster virus: VZV) による末梢神経障害は皮疹を伴うことが特徴だが、時に皮疹を欠くことがありzoster sine herpete (ZSH) として知られていろ。今回われわれはZSHにより嚥下障害を呈した一例を経験した。症例は 60歳女性で右耳痛後に嚥下障害が出現した。右舌咽迷走神経麻痺による嗄声と嚥下障害を認めたが、ほかの脳神経障害はなく、耳、咽喉頭に皮疹を認めなかった。嚥下造影検査は球麻痺のパターンを示した。髄液検査で細胞数と蛋白が上昇し、頭部MRIは正常であり、耳痛の存在からZSHを疑った。アシクロビルで耳痛と嚥下障害は著明に改善した。血清VZV抗体価は既感染のパターンで髄液VZV抗体価とVZV-DNAは陰性であったが、総合的にZSHと診断した。ZSHは検査上明らかなVZVの再活性化を示さないことがあり診断上の注意が必要である。痛みを伴う末梢神経障害ではZSHを積極的に疑う必要がある。

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