耳鼻と臨床
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[第12回頭頸部癌化学療法研究会]聴器癌における放射線治療の役割
長谷川 信吾丹生 健一
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2007 年 53 巻 5Supplement1 号 p. S36-S40

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抄録
近年、脳神経外科・再建外科の進歩に伴い、聴器癌に対して側頭骨の骨構造をそのまま保持して摘出する側頭骨亜全摘が普及してきた。しかし、いまだ本術式を行える施設は限られており、進行癌では放射線治療が選択されることも少なくない。そこで、今回われわれは、聴器癌における放射線治療の役割を明らかにするために、当科で過去12年間に治療した40例の聴器癌を早期癌、進行癌に分類し、放射線治療と手術治療の成績を比較した。早期癌においては、ほとんどの症例で手術を第一選択としていたが、放射線治療を行った症例の成績も良好であり、放射線治療の良い適応であると考えられた。一方、進行癌では、手術例 (11例) と放射線治療例 (9例) の疾患特異的5年生存率は各64%、15%で、2年生存率に限ると、放射線治療の成績はT3症例100% (3/3) 、T4症例が17% (1/6) であった。以上より、放射線療法は、側頭骨外に進展した症例に対してはその効果に限界があるものの、側頭骨内にとどまるT3症例においては、照射法の工夫や化学療法の併用により、根治治療としての役割が期待できるものと考えられた。
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