2008 年 54 巻 5 号 p. 259-264
声門部および声門上部閉鎖障害を伴う嚥下障害に対して、甲状軟骨形成術1型に加えて舌骨甲状軟骨接近術を施行した男性症例を経験した。上顎癌の初期治療の9年後より、失声および嚥下障害が出現した0上気道診察およびMRI検査により、上顎癌の左傍咽頭リンパ節転移およびそれに伴うIX、X、XIIの麻痺と診断し、サイバーナイフ療法を施行した。術前、VEにて声門部および声門上部の閉鎖不全がともに認められ、用手的喉頭挙上にて後者が可能となった。術前VFにて、高度の喉頭挙上前誤嚥が認められた。手術については、局麻下に甲状軟骨形成術1型を定型的に施行したが、甲状軟骨舌骨接近術については、甲状軟骨を前上方に牽引するように接近させた。術後VEおよびVFにて、喉頭の両レベルの閉鎖が改善し、また誤嚥が著明に減少した。