日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
末梢前庭疾患の残存前庭機能と動的前庭代償
北原 糺堀井 新近藤 千雅奥村 新一久保 武
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2007 年 110 巻 11 号 p. 720-727

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抄録

[目的] 頭部や身体の動きに応じた平衡適応現象は動的代償と呼ばれ, 一定の治療により回復し得なかった末梢前庭障害患者の日常生活障害度を左右する重要な過程である. 今回, 前庭神経炎 (VN), めまいを伴う突発性難聴 (SDV), メニエール病 (MD), 聴神経腫瘍 (AT) を対象疾患として, 温度刺激検査およびめまい・ふらつきによる日常生活障害度アンケート (めまいアンケート) を施行し, 疾患別および半規管能別にめまいによる日常生活障害度を検討した.
[対象と方法] 対象は1997~2002年に大阪労災病院および大阪大学耳鼻咽喉科を受診した患者のうち温度刺激検査で一側半規管麻痺 (CP) を認め, めまいアンケートを施行できたVN34例, SDV25例, MD28例, AT14例.
[結果] めまいアンケートによる日常生活障害度は, SDV, VN, MD, ATの順に上昇した. また疾患を軽度CP (25%以上, 45%未満) と高度CP (45%以上, 100%以下) の2群に分けると, VN, SDVでは軽度CP群は高度CP群より有意に日常生活障害度が低かった. 一方, MD, ATでは両群間で有意差を認めなかった.
[考察] 末梢前庭障害が固定するVN, SDVは動的前庭代償がMD, ATより進みやすく, 障害の程度が軽い程代償は速やかであるが, 末梢前庭障害が変動し得るMD, ATは動的前庭代償がVN, SDVより進みにくく, 障害の程度が軽くても代償は速やかに進むとは言えないことが示唆された.

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© 2007 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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