日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
好酸球性中耳炎・副鼻腔炎の診断と治療 好酸球性中耳炎の保存的治療 ―病型別治療方針―
松原 篤
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2007 年 110 巻 3 号 p. 91-94

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抄録

好酸球性中耳炎は気管支喘息などと同様に気道の好酸球性炎症として捉えることができる. その治療にあたっては, 手術により増悪するケースも報告されていることから, 好酸球性炎症を抑える保存的治療が主体となる.
治療の基本的な考え方としては, 好酸球や好酸球から放出される組織障害性タンパクを豊富に含んだニカワ状の好酸球性ムチンを中耳腔より速やかに除去すること, 局所および全身の好酸球性炎症の抑制を図ることが重要である. 好酸球性炎症の制御にはステロイド薬が最も有効であるが, ステロイド薬は副作用の危険も少なくはない. そこで, 種々の好酸球炎症を抑える薬剤を併用し, なるべくステロイドの使用量を減量し, 離脱させる工夫が必要である.
局所治療薬としては, ステロイド薬の他にヘパリンをステロイド薬と併用することでステロイド薬を減量あるいは離脱できる症例がある. また, 内服薬としてはいくつかの抗アレルギー薬, すなわち抗ロイコトリエン薬, PDE阻害薬, 好酸球抑制効果のある第2世代抗ヒスタミン薬などの効果の異なる薬剤を併用することで内服のステロイド薬の減量や早期の離脱を図ることが重要である.
好酸球性中耳炎の病型としては単純穿孔型, 滲出性中耳炎型, 鼓膜膨隆起型などに分類されるが, その病型や疾患の程度に応じて, ステロイド薬やヘパリンによる局所治療を基本として, 種々の抗アレルギー薬による内服治療, さらに難治性の場合にはステロイドの内服や静注を組み合わせて段階的に治療するのが効果的であると考えられる.
本稿では, 好酸球性中耳炎の治療に使われる局所治療薬, 内服薬などについて解説し, 病型に併せた段階的な保存的治療方針について述べる.

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© 2007 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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