日本耳鼻咽喉科学会会報
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110 巻, 3 号
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総説
  • 松原 篤
    2007 年 110 巻 3 号 p. 91-94
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    好酸球性中耳炎は気管支喘息などと同様に気道の好酸球性炎症として捉えることができる. その治療にあたっては, 手術により増悪するケースも報告されていることから, 好酸球性炎症を抑える保存的治療が主体となる.
    治療の基本的な考え方としては, 好酸球や好酸球から放出される組織障害性タンパクを豊富に含んだニカワ状の好酸球性ムチンを中耳腔より速やかに除去すること, 局所および全身の好酸球性炎症の抑制を図ることが重要である. 好酸球性炎症の制御にはステロイド薬が最も有効であるが, ステロイド薬は副作用の危険も少なくはない. そこで, 種々の好酸球炎症を抑える薬剤を併用し, なるべくステロイドの使用量を減量し, 離脱させる工夫が必要である.
    局所治療薬としては, ステロイド薬の他にヘパリンをステロイド薬と併用することでステロイド薬を減量あるいは離脱できる症例がある. また, 内服薬としてはいくつかの抗アレルギー薬, すなわち抗ロイコトリエン薬, PDE阻害薬, 好酸球抑制効果のある第2世代抗ヒスタミン薬などの効果の異なる薬剤を併用することで内服のステロイド薬の減量や早期の離脱を図ることが重要である.
    好酸球性中耳炎の病型としては単純穿孔型, 滲出性中耳炎型, 鼓膜膨隆起型などに分類されるが, その病型や疾患の程度に応じて, ステロイド薬やヘパリンによる局所治療を基本として, 種々の抗アレルギー薬による内服治療, さらに難治性の場合にはステロイドの内服や静注を組み合わせて段階的に治療するのが効果的であると考えられる.
    本稿では, 好酸球性中耳炎の治療に使われる局所治療薬, 内服薬などについて解説し, 病型に併せた段階的な保存的治療方針について述べる.
原著
  • 冨田 俊樹, 小澤 宏之, 坂本 耕二, 藤井 良一, 小川 郁, 藤井 正人, 山下 拓, 新田 清一
    2007 年 110 巻 3 号 p. 95-102
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    中咽頭癌は頸部リンパ節転移進行病変が多く化学放射線療法によって原発巣が制御されてもリンパ節転移が制御されないことがある. また化学放射線療法後のリンパ節の効果判定は難しい. われわれは2001年からT1-3かつN2-3の中咽頭癌12例に対しドセタキセル併用放射線療法に加えplanned neck dissection (PND, 計画的頸部郭清術) を行った.
    本研究は, ドセタキセル併用放射線療法の頸部リンパ節転移病変に対する治療効果を明らかにすること, リンパ節における癌細胞残存の予測因子を明らかにすること, PNDの安全性を検証することを目的とした.
    PNDによって得られたリンパ節標本を病理組織学的に検討したところ, ドセタキセル併用放射線療法のpathological CR率は58.3%であった. PND後の全症例の2年頸部制御率は91.7%であったことから, PNDはN2-3の治療成績の向上に寄与している可能性が高い. TN分類, ドセタキセル総投与量, 照射線量, MRIにおけるリンパ節の最大径および縮小率は, いずれも癌細胞残存の予測因子とならなかった. 術式としては選択的頸部郭清術を基本としたが手術合併症は少なくPNDは安全に施行できることが明らかになった.
    PNDのドセタキセル併用放射線療法への上乗せ効果を明らかにするためにはPND非施行群との比較も含めたさらなるコホート研究が必要である.
  • 千々和 秀記, 進 武一郎, 坂本 菊男, 梅野 博仁, 中島 格
    2007 年 110 巻 3 号 p. 103-106
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    2000年1月から2004年6月までに久留米大学病院耳鼻咽喉科で前頭部・顔面皮膚悪性腫瘍に対し頸部郭清術を行った10症例を対象とし, 頸部リンパ節転移部位やリンパ節に対する治療内容を調査し, 頸部郭清範囲の妥当性について検討した. 手術方法は選択的頸部郭清術のみが2例, 耳下腺浅葉切除+選択的頸部郭清術が5例, 耳下腺浅葉切除+全頸部郭清術が3例であった. このうち結果的に上内深頸領域に転移を認めた症例が3例, 再発を含め耳下腺リンパ節に転移を認めた症例が3例であった. また前頭部悪性黒色腫に対し腫瘍周囲にパテントブルーを注射し, センチネルリンパ節を確認した結果, 耳下腺表層および上内深頸領域に流れるリンパ流が確認できた. すなわち前頭部・顔面皮膚悪性腫瘍のセンチネルリンパ節は耳下腺リンパ節および上内深頸部リンパ節に見出される可能性が高いと考えられた. また前頭部・顔面皮膚悪性腫瘍に対する郭清範囲は耳前部, 耳下部リンパ節を含む耳下腺浅葉切除+選択的頸部郭清術が妥当と考えられた.
  • 首藤 純, 末永 智, 立山 香織, 織部 加奈子, 鈴木 正志
    2007 年 110 巻 3 号 p. 107-110
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    耳症状より初発し急激に増悪した全身型ウェゲナー肉芽腫症を経験したので報告する.
    [症例] 57歳女性. 2カ月前より両側進行性難聴, 鼻汁が出現, 増悪する回転性めまい, 発熱も伴うため, 当科紹介受診. 両側鼓膜, 外耳道発赤, 中耳貯留液を認めた. 両側混合難聴, 左向き眼振, CT上両乳突蜂巣に軟部組織陰影を認めた. 入院後抗菌薬点滴, 鼓膜切開施行するも炎症所見は改善せず. C(PR3)-ANCA陽性であったため, ウェゲナー肉芽腫と診断し精査中, 入院後10日目に呼吸不全出現し, 胸水貯留, 心不全, 肺結節性陰影, 腎機能低下, 上強膜炎が次々と出現. プレドニゾロン, サイクロフォスファミド内服にて寛解したが, 右耳は聾となった.
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