抄録
(目的) Supracricoid laryngectomy (SCL) の導入が当科の喉頭腫瘍治療に与えた影響と本術式の位置づけについて評価することを目的とした.
(方法) 1997-2008年の11年間にSCLを施行した50症例を対象として臨床的検討を行った. 内訳はCricohyoidoepiglottopexy (CHEP) 47例, Cricohyoidopexy (CHP) 3例であった.
(結果) SCL施行例は徐々に増加し, 2003年以降は年間のSCL例数が喉頭全摘出術 (TL) 例を上回った. 術後感染は16例 (32%) に認めたが, 12例は保存的に閉創し, 4例が再手術を必要とした. 照射歴と既往症がある症例は有意に術後感染率が高かった. 音声機能は96%の症例で獲得され, 嚥下機能のゴールである外食は89%の症例で達成された. 5年粗生存率はSCL-CHEP群69%, TL群51%で, 病期III, IVに限定してもSCL-CHEP群がTL群を下回ることはなかった. 喉頭温存率は病期II, III例ではSCL-CHEP導入前が70%, 導入後が89%と有意な上昇がみられ, SCL-CHEPが最も寄与していた.
(結論) 導入後11年間の経験でSCL, 特にSCL-CHEPは機能的にも腫瘍学的にも安定した機能温存手術であることが確認された.