日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
Superior canal dehiscence syndrome (上半規管裂隙症候群)
—その臨床像を中心に—
鈴木 光也
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2011 年 114 巻 1 号 p. 15-23

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抄録

superior canal dehiscence syndrome (上半規管裂隙症候群) とは, 上半規管を被っている中頭蓋窩天蓋や上錐体洞近傍の上半規管周囲に骨欠損を生じ, 瘻孔症状, Tullio現象, 難聴などさまざまな臨床症状を来す疾患単位である. 発症の機序はいまだ不明であるが, その頻度は欧米に比較してアジア諸国では少ない. 本症候群の瘻孔症状やTullio現象は上半規管の刺激によって生じるため特徴的な眼球偏倚がみられる. つまり時計回りまたは反時計回りの回旋成分を含んだ垂直性の動きであり, 上半規管が正に刺激されると上方に, 負に刺激されると下方に眼球が偏倚する. 難聴は伝音難聴 (気導—骨導差) も感音難聴も生じうる. その他, 前庭誘発筋電位 (Vestibular evoked myogenic potential) 検査において振幅の増大と反応閾値の低下がみられる. 画像診断には側頭骨HRCT (high resolution CT) が用いられる. 上半規管裂隙症候群の診断ではスライス幅0.5-1.0mmの冠状断CTが有用とされているが, CTのみでは裂隙の診断に限界があり, false positiveに注意しなければならない. false positiveを排除するためには神経耳科学的検査で上半規管瘻孔を示唆する眼球運動の確認が必要である.

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© 2011 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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