2011 年 114 巻 3 号 p. 133-138
統合失調症にて通院加療中の30歳女性にみられた一過性の聴覚失認例を報告した.
主訴は「きこえが悪い」であったが, よく聴取すると, 「音は分かるが, 何を言っているか分からない」というものであった. 環境音とことばの判別もつかなかった. 純音聴力検査は正常であったが, 語音弁別検査は異常を示した. OAE, ABRには異常なかった. 病歴から祖父母の介護がストレスとなり, 発症したと思われた. 環境を変え, 抗不安薬の内服により, 語音弁別の異常は短期間で改善した. 本例の聴覚障害と統合失調症との関連について考察した.