日本耳鼻咽喉科学会会報
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114 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
総説
  • 樗木 俊聡
    2011 年 114 巻 3 号 p. 107-113
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/03
    ジャーナル フリー
    健常人の腸は, 常在菌叢, 腸管上皮, 腸関連リンパ組織より構成されている. 免疫反応の主たる場である腸関連リンパ組織は, 常在菌叢や食餌由来の抗原には反応を起こさず, 一方で, 外来病原微生物には効率よく免疫反応を惹起しなければならない. この一見逆説的なホメオスターシスの構築や維持に樹状細胞が重要な役割を担うことが明らかになりつつある. 本稿では, 腸のホメオスターシスの構築や維持における樹状細胞の役割を, 常在菌叢や腸管上皮の役割と関連付けながら概説する.
  • 曾根 三千彦
    2011 年 114 巻 3 号 p. 114-120
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/03
    ジャーナル フリー
    近年胃食道逆流症 (gastroesophageal reflux disease: GERD) の増加が指摘されている本邦において, 逆流が関与した耳鼻咽喉科領域の疾患—咽喉頭酸逆流症 (Laryngopharyngeal reflux disease: LPRD)—も増加傾向にある. 逆流は咽喉頭に留まらず, 鼻副鼻腔から上咽頭さらには耳管から中耳腔にまで達し, 十二指腸内容液の逆流が関与した症例も認められている. GERDは胃内容物の逆流によって不快な症状や合併症を起こした状態と定義されており, 食道外症候群として喉頭炎・咽頭炎・副鼻腔炎・中耳炎が耳鼻咽喉科領域の疾患に含まれている. 過去の論文の評価から喉頭炎のみがGERDとの関連性を確認され, 他の疾患との関連性については推測段階に留まっており, 咽喉頭炎や自覚症状に対するプロトンポンプ阻害剤の効果も確定はしていない. 日本消化器病学会から発刊されたGERD診療ガイドラインでは, 上記疾患に加えて閉塞性睡眠時無呼吸症候群の原因の一つとしてGERDを挙げている. LPRD患者の生活の質 (QOL) は多方面にわたって低下しており, 局所所見よりも臨床症状と強く相関する傾向がある. GERDと同様にLPRDの治療では, 症状のコントロールとQOLの改善が目標である. そのためには耳鼻咽喉科医の的確な診断と治療が必要であり, LPRDの診療ガイドラインの作成も望まれる.
  • 河田 了
    2011 年 114 巻 3 号 p. 121-125
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/03
    ジャーナル フリー
    頸部郭清術は, 頸部リンパ節転移に対する標準術式であり, 既に100年以上の歴史がある. 頭頸部外科医にとって最も基本的な術式の一つであり, その手技に習熟しておく必要がある. 頸部郭清術はさまざまな術式が考案され, 郭清範囲, 温存する組織によって手術アプローチや難易度は異なってくる. レベルIからVを郭清する全頸部郭清術を基本として, 肩甲舌骨筋上頸部郭清術, 側頸部郭清術などに代表される選択的頸部郭清術がある. 選択的頸部郭清術では郭清範囲が少なくなる一方, 温存する組織が多く, また術野の展開が難しくなるので, 手術手技としての難易度は上がる. 選択的頸部郭清術は, あくまで全頸部郭清術の「部分版」であって, 郭清すべき領域が甘い郭清になってはならない. 本稿では, 郭清術として最も頻度が高くかつ頸部郭清術の基本となる全頸部郭清術について, 「確実かつ安全な」という点を主題として, 成書にはあまり書かれていない手技上のコツも含めて手技に絞って述べることにする. 「確実かつ安全な」という観点から手技上のポイントを整理すると, 皮切線に応じた十分な皮膚剥離を行い広い術野を得ること, 本術式は筋膜に沿って剥離を進めていくことが基本であるので, 頸部の解剖, 特に筋膜の構造に精通すること, 結紮することを怠慢せず, 極力出血させないこと, 剥離をする手術器具を十分に使いこなせること, 根治的な術式を十分に経験した後に温存術式にトライすることなどが挙げられる.
原著
  • 北尾 恭子, 本間 明宏, 折舘 伸彦, 鈴木 清護, 鈴木 章之, 原 敏浩, 加納 里志, 水町 貴諭, 瀧 重成, 稲村 直哉, 福田 ...
    2011 年 114 巻 3 号 p. 126-132
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/03
    ジャーナル フリー
    過去20年間の顎下腺原発の悪性腫瘍1次症例14例について検討した. 組織型は, 腺様嚢胞癌5例, 扁平上皮癌3例, 粘表皮癌2例, 多形腺腫由来癌2例, 癌肉腫1例, 大細胞癌1例であった. TNM分類ではT1: 1例, T2: 7例, T3: 4例, T4: 2例, N0: 9例, N1: 1例, N2: 4例であった. 初診時に遠隔転移を来していた症例はなかった. 治療内容は, 手術が13例, うち, 手術のみが7例, 放射線治療を加えたものが3例, 手術と放射線治療に化学療法を加えたものが2例あった. 1例は手術を行わず対症療法のみとなった. 手術は, 腫瘍の進展範囲に合わせて行い, 頸部郭清は9例に行った. 根治治療を行った1次症例13例の5年粗生存率は全体で57%であった. 組織型別でみると, 多型腺腫内癌, 大細胞癌は100%, 腺様嚢胞癌80%, 粘表皮癌50%, 扁平上皮癌, 癌肉腫は0%であった. Stage分類別でみると, Stage I: 100%, Stage II: 83%, Stage III: 50%, Stage IV: 0%であった. Stage IVおよび扁平上皮癌, 癌肉腫は予後不良であった. 腫瘍の進展範囲に合わせた切除と, 被膜を越えて軟部組織浸潤があった場合には術後照射を加える方針で治療を行い, Stage I-IIは良好な成績であったが, Stage III-IV, 高悪性度の症例の成績は不良であった. Stage III-IVや悪性度の高い腫瘍に対しての治療成績向上が今後の課題である.
  • 神崎 仁, 原田 竜彦, 神崎 晶
    2011 年 114 巻 3 号 p. 133-138
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/03
    ジャーナル フリー
    統合失調症にて通院加療中の30歳女性にみられた一過性の聴覚失認例を報告した.
    主訴は「きこえが悪い」であったが, よく聴取すると, 「音は分かるが, 何を言っているか分からない」というものであった. 環境音とことばの判別もつかなかった. 純音聴力検査は正常であったが, 語音弁別検査は異常を示した. OAE, ABRには異常なかった. 病歴から祖父母の介護がストレスとなり, 発症したと思われた. 環境を変え, 抗不安薬の内服により, 語音弁別の異常は短期間で改善した. 本例の聴覚障害と統合失調症との関連について考察した.
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