過去20年間の顎下腺原発の悪性腫瘍1次症例14例について検討した. 組織型は, 腺様嚢胞癌5例, 扁平上皮癌3例, 粘表皮癌2例, 多形腺腫由来癌2例, 癌肉腫1例, 大細胞癌1例であった. TNM分類ではT1: 1例, T2: 7例, T3: 4例, T4: 2例, N0: 9例, N1: 1例, N2: 4例であった. 初診時に遠隔転移を来していた症例はなかった. 治療内容は, 手術が13例, うち, 手術のみが7例, 放射線治療を加えたものが3例, 手術と放射線治療に化学療法を加えたものが2例あった. 1例は手術を行わず対症療法のみとなった. 手術は, 腫瘍の進展範囲に合わせて行い, 頸部郭清は9例に行った. 根治治療を行った1次症例13例の5年粗生存率は全体で57%であった. 組織型別でみると, 多型腺腫内癌, 大細胞癌は100%, 腺様嚢胞癌80%, 粘表皮癌50%, 扁平上皮癌, 癌肉腫は0%であった. Stage分類別でみると, Stage I: 100%, Stage II: 83%, Stage III: 50%, Stage IV: 0%であった. Stage IVおよび扁平上皮癌, 癌肉腫は予後不良であった. 腫瘍の進展範囲に合わせた切除と, 被膜を越えて軟部組織浸潤があった場合には術後照射を加える方針で治療を行い, Stage I-IIは良好な成績であったが, Stage III-IV, 高悪性度の症例の成績は不良であった. Stage III-IVや悪性度の高い腫瘍に対しての治療成績向上が今後の課題である.
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