2011 年 114 巻 7 号 p. 620-623
Actinomyces naeslundiiはオーラルバイオフィルムを形成する細菌である. この菌は歯周囲炎に関与するが, 頸部放線菌症の原因となった報告例はない. 今回, 珍しいA. naeslundiiによる頸部放線菌症例を経験したので報告する.
症例は56歳の男性で, 主訴は頸部腫脹で歯科治療も受けていた. 抗菌薬の点滴と膿の穿刺吸引で腫脹は軽減した. しかし, その後, 再び腫脹した. 膿からA. naeslundiiが同定された. そして, 切開排膿を行い, 薬剤感受性試験結果に基づいて抗菌薬を変更し治癒した. 本症例は, 本邦で最初のA. naeslundiiによる頸部放線菌症例であると推察された.