埋め込み型骨導補聴器 (BAHA) は, 従来の補聴器と比較して音質, 静寂下での語音聴取などに優れるが, 手術を必要とし術後合併症などの欠点もある. 今回われわれは, 2001年9月から2005年10月までのBAHA手術例を対象に, 聴覚機能検査所見, 術後9カ月から8年10カ月 (平均4年7カ月) における術中・術後合併症を検討した. 対象は12例13耳 (男性8例, 女性4例, 年齢20~71歳) であり, 両耳施行例が1例, 一側性高度感音難聴に対する手術施行例が1例存在した. 一側性高度感音難聴例を除いた11例の平均震音聴覚閾値は, BAHA非装用時が46~83dB (平均65.2dB), BAHA装用時が21~38dB (平均29.9dB) であり, ファンクショナルゲインは16~52dB (平均35.3dB) であった. 術中合併症として, 4耳に硬膜露出もしくは静脈性出血, 1耳に乳突蜂巣の開放, 1耳に皮弁の切断が認められたが, 重篤なものはみられなかった. 皮膚の炎症反応は, 術後1年目には約70%に認められたが, 多くはGrade 1の軽微なものであり, 時間とともに減少した. 1耳で術後2年目に接合子が骨導端子からはずれ, 骨導端子が皮下に埋没した. すべて外来処置にて対応可能であり, インプラント脱落や手術を要した症例は認められなかった. BAHA手術の際には, 術中・術後合併症が生じうることを十分に説明した上で適応を決定する必要がある.
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