日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
Usher症候群の臨床的タイプ分類の問題点
岩崎 聡吉村 豪兼武市 紀人佐藤 宏昭石川 浩太郎加我 君孝熊川 孝三長井 今日子古屋 信彦池園 哲郎中西 啓内藤 泰福島 邦博東野 哲也君付 隆西尾 信哉工 穣宇佐美 真一
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2012 年 115 巻 10 号 p. 894-901

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抄録

Usher症候群のタイプ分類の診断における問題点について検討した. 13施設による多施設共同研究で, 6施設において平成22年11月から平成23年8月までの10カ月間でUsher症候群と臨床診断された26症例 (男性12名, 女性14名) を対象とした. 検査の実施率は純音聴力検査と遺伝子検査は100% (26/26例) であったが, 語音聴力検査, OAE, 眼振検査, 眼科検査が60~70% (15~19/26例), 前庭機能検査であるカロリックテスト (50%: 13/26例) と重心動揺検査 (30%: 8/26例) の実施率は低かった. タイプ1が10例 (38.5%), タイプ2が6例 (23.1%), タイプ3が10例 (38.5%) であった. 難聴の平均診断年齢は, タイプ1が1.1歳, タイプ2が25.7歳, タイプ3が44.4歳, 難聴の進行を自覚している症例は13例 (50%) で, うち9例 (69.2%) がタイプ3であった. 今回収集できたデータからタイプ分類を典型例と非典型例に分けると, 診断基準が比較的はっきりしているタイプ1 (70%: 7/10例), タイプ2 (83.3%: 5/6例) は非典型例が多かったのに対し, 曖昧な表現のタイプ3 (90%: 9/10例) は典型例が多かった. Usher症候群は難聴・夜盲の発症時期や難聴の進行やめまいの有無など臨床症状に多様性があるため, どの項目を重視して決めるかによって施設間でタイプ分類が異なることがあり得る. 今回施設間でのタイプ分類に違いが生じないため「Usher症候群タイプ分類のためのフローチャート」を作成し, 統一したタイプ分類の実施に有用であると考えられた.

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© 2012 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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