抄録
肝細胞癌治療後に単発性舌骨転移を来した1例を報告する. 症例は81歳男性で, 1カ月来の有痛性前頸部腫瘤と嚥下時痛を主訴に当科を受診した. 既往歴として肝細胞癌に対して, 複数回肝動脈塞栓術を受けている. 舌骨体部左側に有痛性腫瘤を触知し, 穿刺吸引細胞診にて低分化癌の診断を得た. CTにて舌骨の破壊性変化を伴った腫瘤形成が認められ, PETにてSUV3.8の高集積を認めたことから, 肝細胞癌の舌骨転移を疑った. 全身麻酔下に腫瘤を全摘出し, 病理組織検査にて肝細胞癌の舌骨転移と診断した. 術後, 嚥下時痛は消失した. 肝細胞癌の骨転移症例においても, 比較的低侵襲で対応可能な場合は, 症状緩和のための手術療法の選択も有効と考えられた.