目的と方法: 当院における上咽頭癌の治療成績の評価と予後因子の解析を目的として, 1997年4月から2006年3月までの9年間に当院で一次治療を行った32症例を対象としてretrospectiveに検討した. 生存率に影響する因子として年齢, 性別, 組織分類, 亜部位, TN分類, 病期分類, 放射線照射方法, 照射中断の有無, 化学療法内容に注目して生存分析を行った.
結果: 全症例の5年疾患特異的生存率 (CSS) 43.4%, 5年無病生存率 (DFS) 34.8%であり, III/IV期症例では5年CSS34.5%, 5年DFS29.8%であった. Cox比例ハザードモデルによる多変量解析の結果, 全症例のCSSでは年齢 (≥61 vs ≤60, リスク比 (RR)=5.717, p=0.006), T分類 (3/4 vs 1/2, RR=6.957, p=0.004), プラチナ製剤の有無 (無vs有, RR=3.911, p=0.012) の3因子が, DFSではT分類 (3/4 vs 1/2, RR=3.499, p=0.019), プラチナ製剤の有無 (無vs有, RR=2.947, p=0.028) の2因子が各々における独立した予後因子であった. III/IV期症例に限定した同様の検討では, プラチナ製剤の有無のみがCSS (RR=4.503, p=0.023) およびDFS (RR=4.218, p=0.014) における独立した予後因子であった. なおIII/IV期症例において導入化学療法 (NAC) 施行群は非施行群に比べ単変量解析ではCSS, DFSともに良好であった (p=0.066/p=0.025) が, 多変量解析では有意差を認めなかった.
結論: 上咽頭癌治療におけるプラチナ製剤併用の優位性が改めて裏付けられた. 一方, 化学放射線療法においてドセタキセル単剤併用はプラチナ製剤併用と同等の効果は得られなかった. また進行期上咽頭癌に対してNACとしてのDCF (Docetaxel, Cisplatin, 5-FU) 療法が有用である可能性が示唆された.
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