日本耳鼻咽喉科学会会報
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味覚障害1,059例の原因と治療に関する検討
坂口 明子任 智美岡 秀樹前田 英美根来 篤梅本 匡則阪上 雅史
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2013 年 116 巻 2 号 p. 77-82

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抄録

味覚障害は原因がさまざまであり, 各原因別での改善率や治療期間, 経過の報告は多くない. 今回, われわれは味覚障害患者1,059例を原因別に自覚症状の改善率, 治癒期間について検討した.
1999年1月から2011年1月までの12年間に味覚外来を受診した味覚障害例1,059例 (男性412例, 女性647例, 平均年齢60.0歳) を対象とした.
全例に問診, 味覚検査 (電気味覚検査, 濾紙ディスク法), 採血 (Zn, Fe, Cu), SDS (Self-rating Depression Scale, 自己評価式抑うつ性尺度) を施行し経過を追った. 治療は亜鉛製剤, 鉄剤, 漢方薬, 抗不安薬などの内服を症状, 程度に応じて行った. また, 自覚症状の程度をVAS (Visual Analogue Scale) により評価した.
味覚障害の原因分類では特発性が最も多く192例 (18.2%) であった. 次いで心因性が186例 (17.6%), 薬剤性が179例 (16.9%) であった. 転帰が確定し得た680例で自覚症状の改善率は, 感冒後64/92例 (70.2%), 鉄欠乏性31/35例 (88.6%), 亜鉛欠乏性85/116例 (73.3%) と比較的良好であったが, 外傷性は2/12例 (16.7%), 医原性は13/33例 (39.4%), 心因性は46/100例 (46.0%) と低かった. 平均治癒期間は, 薬剤性で約10カ月間と鉄欠乏性や感冒後と比較すると, 約2倍長期間に渡った. また症状出現から受診までが6カ月以上の例に対し, 6カ月未満の例では改善率が良好で, 回復までの期間は前者が後者と比べると有意に長かった (p<0.05).

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© 2013 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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