抄録
扁桃周囲膿瘍に対する外科的な処置としては一般的に穿刺あるいは切開術が行われ, 多くの症例はこれらの治療で治癒する. しかし, 時に排膿が不十分ですぐに再燃したり, 症状が増悪して深頸部膿瘍に至ったりすることがある. したがって, 膿瘍の存在部位を明確にし, 安全なかつ十分な切開排膿を行うことが重要と考えられる. そこで今回われわれは, 本症のCT所見と臨床的特徴を比較するとともに, 外科的治療の適応とその妥当性について検討した. 対象は2007年1月から2012年4月までに当科で治療した扁桃周囲膿瘍において, 造影CTを行った145症例152側とした. そして, CT画像による膿瘍の形態をOval型とCap型に, さらにその局在部位を上極と下極に分類することで, 4つの型に分け, その臨床症状を比較した. その結果, 上極Oval型が最も多く47%を占め, 下極Cap型は全体の16%とその頻度は少ないものの, 喉頭蓋や披裂部の浮腫を伴う症例が他の群と比較して統計学的に有意に多かった. また, 下極Cap型は気管切開を要した症例が多く, 常に気道確保の必要性を念頭に置いて対処すべきであると思われた. さらに, Cap型は被膜外側に存在し深頸部膿瘍を発症する危険性があり, 下極型は穿刺や切開が困難あるいは危険な例が多いため, このような症例に対しては, 膿瘍扁摘などのより効果が確実で安全性の高い治療法が適応になると考えられた.