日本耳鼻咽喉科学会会報
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116 巻 , 8 号
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総説
  • 梅田 泉, 藤井 博史
    2013 年 116 巻 8 号 p. 933-940
    発行日: 2013/08/20
    公開日: 2013/10/09
    ジャーナル フリー
    分子イメージングは, 生体内の種々の生理現象や病態をin vivoで可視化し, 評価する技術であり, ライフサイエンス研究のキーテクノロジーとして, この10年で長足の発展を遂げた. 分子イメージング研究ではさまざまなモダリティが活用されているが, その中で核医学検査は感度が極めて高く, 体深部からの信号も定量的に測定できるといった利点があり, 現時点では臨床に最も近い位置にある. 既にいくつもの検査が疾病診断の有用な手法として実地診療で用いられている. 例えば18F-FDG PET/CT検査は頭頸部癌を含めたがんの病態評価に有用であり, また放射線治療を行う上で, 照射野決定等に有用な情報を与える. さらに, RECISTでの判定の難しい分子標的薬の早期治療効果判定への応用も期待されている. その他, 放射性Cu標識ATSMによる腫瘍内低酸素イメージングなど, 生体機能を評価する多くの分子イメージングプローブが臨床研究に進んでいる. 分子イメージング技術は新薬開発のツールとしても活用されている. 新薬候補化合物自体を標識することで, 薬物の体内動態を同一個体で経時的にin vivoで可視化でき, 定量的に評価できる. また, 薬物の標的部位と特異的に作用するプローブを用いて受容体占有率を測定し, 副作用を含めた検討から至適投与用量を決定することも可能であろう. 新薬候補化合物の作用機序に基づいた生体応答をイメージングすることで, 薬効の評価やproof of conceptの取得も試みられている. 光イメージング技術は, 現時点では臨床応用に制限があるものの, プローブの分子設計の工夫と内視鏡や体腔鏡などとの組み合わせにより, 微小癌の検出や癌特異的治療など新しい臨床応用への道が開拓されつつある. さらに, 診断と治療を一体化し, 効果をリアルタイムに観察しながら治療を進める“theranostics”という試みも始まっている.
  • 河田 了
    2013 年 116 巻 8 号 p. 941-946
    発行日: 2013/08/20
    公開日: 2013/10/09
    ジャーナル フリー
    耳下腺腫瘍の発生率は頭頸部腫瘍の中では約4%を占める. 耳下腺腫瘍には良性, 悪性腫瘍があるが, 圧倒的に良性腫瘍が多い. 2005年のWHO分類によれば病理組織学的に良性は10種類, 悪性は23種類に分類されており, 非常に多彩であるのが特徴である. 良性腫瘍の90%は多形腺腫あるいはワルチン腫瘍であり, 穿刺吸引細胞診 (FNA) を中心とした検査によって多くの症例で術前診断が可能である. 多形腺腫は悪性化の可能性もあり一般的に手術適応になる. 手術に際して顔面神経の温存が重要である. 当科のデータでは, 一時麻痺率は浅葉腫瘍手術で16%, 深葉腫瘍手術で48%, 下極腫瘍手術で13%であった. 悪性腫瘍はその悪性度がさまざまであり, 術前の悪性度診断がポンイトになる. 耳下腺癌全体でみるとFNAで組織型も悪性度も診断できたのは18%にすぎなかった. 術中迅速診断による診断でも, 組織型も悪性度も診断できたのは47%であった. 特に低から中悪性腫瘍ではその術前悪性度診断が時に困難であるのが現状である. 悪性腫瘍の予後因子は進行度および組織学的悪性度であるから, 切除範囲を決定する上で, 組織型にこだわるより悪性度を重視する方が良いと考えた. 悪性腫瘍の治療は手術治療が第一選択であり, 放射線治療は補助的に用いられる.
原著
  • 大堀 純一郎, 馬越 瑞夫, 宮下 圭一, 早水 佳子, 原田 みずえ, 黒野 祐一
    2013 年 116 巻 8 号 p. 947-952
    発行日: 2013/08/20
    公開日: 2013/10/09
    ジャーナル フリー
    扁桃周囲膿瘍に対する外科的な処置としては一般的に穿刺あるいは切開術が行われ, 多くの症例はこれらの治療で治癒する. しかし, 時に排膿が不十分ですぐに再燃したり, 症状が増悪して深頸部膿瘍に至ったりすることがある. したがって, 膿瘍の存在部位を明確にし, 安全なかつ十分な切開排膿を行うことが重要と考えられる. そこで今回われわれは, 本症のCT所見と臨床的特徴を比較するとともに, 外科的治療の適応とその妥当性について検討した. 対象は2007年1月から2012年4月までに当科で治療した扁桃周囲膿瘍において, 造影CTを行った145症例152側とした. そして, CT画像による膿瘍の形態をOval型とCap型に, さらにその局在部位を上極と下極に分類することで, 4つの型に分け, その臨床症状を比較した. その結果, 上極Oval型が最も多く47%を占め, 下極Cap型は全体の16%とその頻度は少ないものの, 喉頭蓋や披裂部の浮腫を伴う症例が他の群と比較して統計学的に有意に多かった. また, 下極Cap型は気管切開を要した症例が多く, 常に気道確保の必要性を念頭に置いて対処すべきであると思われた. さらに, Cap型は被膜外側に存在し深頸部膿瘍を発症する危険性があり, 下極型は穿刺や切開が困難あるいは危険な例が多いため, このような症例に対しては, 膿瘍扁摘などのより効果が確実で安全性の高い治療法が適応になると考えられた.
  • 五島 史行, 堤 知子, 小川 郁
    2013 年 116 巻 8 号 p. 953-959
    発行日: 2013/08/20
    公開日: 2013/10/09
    ジャーナル フリー
    片頭痛関連めまいは通常型の片頭痛とめまいが共通の病因によって生じると考える疾患単位として提唱されたものである. 原因不明の反復性めまい患者には片頭痛関連めまいが含まれていると考えられる. 本邦における片頭痛関連めまいの臨床像を明らかにするため, 外来めまい患者を対象に検討を行った. 片頭痛関連めまいの診断基準として, めまい発作の反復, 国際頭痛分類の診断基準を満たす片頭痛を有するか, 既往がある, めまい発作に同期して, 片頭痛の症候 (片頭痛性頭痛, 音過敏, 光過敏, 閃輝暗点) があったことがある, 一側性の関連を想定させる難聴がない, 他の疾患が除外できる, を用いた. 553名のめまい外来患者のうち片頭痛関連めまいと診断した症例は46例 (8.3%) であった. 典型的な片頭痛関連めまい患者の臨床像は, 30~40台の女性であり, めまいを発症する以前から片頭痛を発症し, 1~10年前から年に一度程度の, 頭痛を随伴した1~24時間程度続く回転性+浮動性のめまいを認める症例である. 片頭痛関連めまいの診断基準に難聴のある症例を含めるかどうかについてはメニエール病との鑑別の問題もあり, 議論がある. めまいを反復し難聴を認め, 片頭痛を合併した症例の扱いについては今後の検討が必要である.
  • 宇野 敦彦, 堀井 新, 今井 貴夫, 大崎 康宏, 鎌倉 武史, 北原 糺, 滝本 泰光, 太田 有美, 森鼻 哲生, 西池 季隆, 猪原 ...
    2013 年 116 巻 8 号 p. 960-968
    発行日: 2013/08/20
    公開日: 2013/10/09
    ジャーナル フリー
    内リンパ水腫の診断にMRIによる画像診断が導入されてきた. 当施設での内耳造影MRIによる内リンパ水腫検出について, 造影剤投与法による違い, また従来からの水腫推定検査である蝸電図, グリセロールテストとの比較を行った.
    めまい発作の頻度が高い, 一側性メニエール病あるいは遅発性内リンパ水腫例に対し, 造影剤を鼓室内投与 (17例) あるいは経静脈的に投与 (10例) し, 3テスラMRIによる2D-FLAIR像を得た. 内耳の外リンパ液は高信号に描出され, 内リンパ腔は低信号域となる. 蝸牛管に相当する部分に明らかな低信号領域を認めた場合を蝸牛水腫と判断し, 前庭の写るスライスの過半数で大部分に低信号領域がみられた場合を前庭水腫とした.
    鼓室内投与法では88% (15/17例) に, 静注法では90% (9/10例) に内リンパ水腫を検出した. 静注法の対側耳では20% (2/10例) に水腫を検出した. 蝸電図やグリセロールテストは, 難聴が進行している例では評価が困難で, それぞれ陽性例は患側耳で15例と6例のみにとどまった. ただ蝸電図は波形の分析が可能であれば陽性率は高く, 患側耳の88% (15/17耳) に相当した. MRIと蝸電図の両者の結果が得られた例では, 静注法で得られた対側耳の結果も含めて78% (21/27耳) が一致した.
    定性的な水腫の有無について, 鼓室内投与法と静注法による検出率は同等であった. 内耳造影MRIは内リンパ水腫診断において従来の検査以上に有効と考えられる
  • 佐藤 佑樹, 増田 正次, 甲能 直幸
    2013 年 116 巻 8 号 p. 969-974
    発行日: 2013/08/20
    公開日: 2013/10/09
    ジャーナル フリー
    耳鼻咽喉科領域で急性に発症するステロイド精神病の報告例は極めて少なく, その臨床像は周知されていない. 今回, 急性感音難聴に対し副腎皮質ステロイドを投与後, 急性にステロイド精神病を発症し, その後の重症度がステロイド投与量に鋭敏に反応した症例を経験した. 症例は36歳女性で, 下痢, 嘔吐, 低Na血症のため入院した. 既往は特になく, 兄が自殺したという家族歴がある. 副腎皮質刺激ホルモン単独欠損症, 混合性結合組織病と診断され, プレドニゾロン (PSL) 7.5mg/日で治療開始した. その後, 急性感音難聴を発症したため, PSLを40mg/日へと増量したところ著明な精神症状が出現し, PSL減量に伴い症状の改善を認めた. ステロイド精神病の臨床像, リスクファクターを理解し, ステロイドを使用する際の注意を喚起する症例である.
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