2013 年 116 巻 8 号 p. 969-974
耳鼻咽喉科領域で急性に発症するステロイド精神病の報告例は極めて少なく, その臨床像は周知されていない. 今回, 急性感音難聴に対し副腎皮質ステロイドを投与後, 急性にステロイド精神病を発症し, その後の重症度がステロイド投与量に鋭敏に反応した症例を経験した. 症例は36歳女性で, 下痢, 嘔吐, 低Na血症のため入院した. 既往は特になく, 兄が自殺したという家族歴がある. 副腎皮質刺激ホルモン単独欠損症, 混合性結合組織病と診断され, プレドニゾロン (PSL) 7.5mg/日で治療開始した. その後, 急性感音難聴を発症したため, PSLを40mg/日へと増量したところ著明な精神症状が出現し, PSL減量に伴い症状の改善を認めた. ステロイド精神病の臨床像, リスクファクターを理解し, ステロイドを使用する際の注意を喚起する症例である.