抄録
鼻副鼻腔領域に比べ, 側頭骨領域のナビゲーション手術はあまり普及していない. これは必ずしも当該領域においてコンピュータやナビゲーション技術の必要性が低いと判断されているためではなく, 側頭骨領域のナビゲーション手術特有の使いにくさ, 侵襲性などの問題点によりナビゲーションの利点を実感しにくかったためと考えられる. 九州大学では耳鼻咽喉科と先端医工学診療部とが連携し, 側頭骨領域の手術ナビゲーションで問題と考えられた精度, 侵襲性, インターフェースの3点について解決を試みた. 開発された新技術によりこれまで侵襲性の高い方法でのみ可能であった高精度の位置合わせ (レジストレーション), 長時間手術で安定して使用できるリファレンスが可能になった. レジストレーションの時間も1分以内と短縮された. さらに, 執刀医が顕微鏡を見て手術している間にも重要臓器との近接を音声でフィードバックする機能を開発し, 執刀医が手術中にナビゲーション情報にアクセスできない矛盾を解消した.