日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
人工内耳長期装用症例100例のアンケート調査の検討
―満足度, 役立ち度との関連を中心に―
白井 杏湖河野 淳西山 信宏萩原 晃河口 幸江齋藤 友介富澤 文子芥野 由美子野波 尚子鈴木 衞
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2014 年 117 巻 11 号 p. 1329-1338

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抄録

 はじめに・目的: 人工内耳装用効果の評価において満足度は重要である. 満足度を向上させる方法を見出すため, アンケート調査を用いて満足度関連の項目を中心に検討した.
 対象・方法: 成人後に人工内耳埋め込み術を施行し5年以上経過した100例を対象に常用しているコミュニケーション手段, 異なる条件下での聴き取り, 不満点, 役立ち度, 不安度, 満足度, 装用時間についてアンケートを行った. 各項目, 聴き取りと役立ち度, 不安度, 満足度の関連性, 人工内耳活用度と各項目の関連性について検討した.
 結果・考察: 条件が良いほど聴き取りは良い傾向にあり, 80%が役立っている, 62%が満足していると評価していた. 不満点は2000年調査1) と比べ一部軽減していた. 聴き取りと役立ち度,満足度は関連しており, 聴き取りが良いほど役立っている, 満足していると評価していた.
 コミュニケーションでの人工内耳活用度と役立ち度は有意に関連していたが, 不安度と満足度とは有意な関連がみられなかった. 役立ち度が直接コミュニケーションの状況を反映するのに比べて, 満足度はコミュニケーション手段以外にも, 心理的要素などほかの因子が関与することを示唆するものと思われる. 患者の術前の聴き取りの現状を把握し, 人工内耳埋め込み術後の経過を個々に予測し, 術前に十分なカウンセリングを施行するなどの配慮が必要と考えられた.

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© 2014 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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