2014 年 117 巻 2 号 p. 128-134
成人急性鼻副鼻腔炎において集団保育児 (集保児) との同居, 65歳以上は薬剤耐性菌の危険因子とされているが, これらの危険因子と成人急性鼻副鼻腔炎の関係について検討を行った報告は少ない. 今回成人急性鼻副鼻腔炎症例における集保児との同居と性差, 年齢構成, 薬剤耐性菌の検出頻度の関係および年齢層と薬剤耐性菌の検出頻度の関係について調査した. 2010~2012年に当院を受診した成人急性鼻副鼻腔炎症例598名を対象とした. 性差は女性が多く, 年齢構成は30代が最も高い割合を占めた. 女性は男性と比較し有意に集保児との同居ありの症例 (集保児同居例) が高い割合を占めた. 30代の症例は30代以外の症例と比較し, 集保児同居例の占める割合が有意に高かった. drug-resistant Streptcoccus pneumoniae,ampicillin (ABPC) 耐性Haemophilus influenzae の検出頻度は, 集保児同居例が同居なしの症例と比較し有意に高かった. 65歳以上と65歳未満の群の薬剤耐性菌の検出頻度に有意差は認めなかった. 集保児との同居は薬剤耐性菌の危険因子であり, 成人急性鼻副鼻腔炎は集保児からの家族内感染が発症要因の一因である可能性が示唆された. 成人急性鼻副鼻腔炎の治療に当たり, 集保児との同居の有無を必ず問診にて確認すべきであると思われた.