切迫早産治療薬の塩酸リトドリン (ルテオニン®) による両側の耳下腺と顎下腺の腫脹を来した26歳女性症例を報告する. 症例は, 妊娠26週に生じた右傍卵巣囊胞茎捻転に対して右卵管切除術を受けた. 術後, 子宮収縮を認め, 切迫早産の治療のために本薬剤が点滴された. しかし, 両側唾液腺腫脹が生じ, 血清アミラーゼも上昇した. 本薬剤を投与中止し, 腫脹と血清アミラーゼは改善した. 本薬剤は β2 刺激薬で, この β 作用により唾液腺が腫脹, 血清アミラーゼが上昇したと推察した. 本症例は, 耳鼻咽喉科からの本薬剤による唾液腺腫脹の最初の報告例で, 本薬剤が唾液腺腫脹を来すことを耳鼻咽喉科医も記憶しておく必要があると考えた.