抄録
 今回われわれは妊娠中に発症した舌癌に対し, 妊娠を継続しながら遊離皮弁による再建術を施行し, 母子ともに良好な経過が得られたので報告する.
 症例は33歳, 女性. 右舌縁部腫瘍を認め, 他病院で舌癌と診断され妊娠25週4日で当科を受診した. 諸検査の結果, 舌癌 (T2N0M0) と診断した.
 妊娠28週0日, 気管切開, 予防的頸部郭清, 舌半切除術, 前外側大腿皮弁 (以下 ALT flap) による舌再建術を施行した. 術後経過は母体および胎児とも良好で, 妊娠38週6日, 当院産婦人科に緊急入院となり, 同日自然分娩にて女児を出産した. 術後2年10カ月経過した現在, 舌癌の再発や転移は認めず, 女児の発育や成長に異常を認めていない.