日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
本邦における人工中耳 (Vibrant Soundbridge®) 臨床治験
―アンケートによる自覚的評価結果について―
熊川 孝三神崎 晶宇佐美 真一岩崎 聡山中 昇土井 勝美内藤 泰暁 清文東野 哲也髙橋 晴雄神田 幸彦
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2015 年 118 巻 11 号 p. 1309-1318

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抄録

 伝音難聴および混合性難聴患者に対する正円窓刺激法による人工中耳 (Vibrant Soundbridge® 以下 VSB) の有効性および安全性について13施設による多施設共同治験を実施した. 本報告ではアンケートによる自覚的評価結果, 1日の装用時間,満足度について有効性を検証した.
 対象は補聴器を装用できない, あるいは補聴器適合検査の指針 (2010) に準じて評価するも適合不十分であった18歳以上の両側の難聴例23例である.
 「きこえの評価―補聴前・補聴後―」を用いた解析では, 術前裸耳よりも VSB 装用後20週目で, 有意に主観的な改善効果があることが示された. また,「補聴器の有効性評価簡略化版 APHAB」を用いた解析では, VSB 装用によってコミュニケーションの容易さ, 騒音下での言語理解, 反響音の質問群に関して, 術前裸耳よりも有意に主観的な改善効果があることが示された. ただし, 音に対する不快感の質問群では VSB 装用後に有意に悪化が認められ, 装用に対する慣れが必要と考えられた. 1日の装用時間の平均値は12.0±4.6 (1標準偏差) 時間であり, 満足度の平均は100点満点中77.3±18.0 (同) 時間であった.
 以上より, VSB 装用によって術前裸耳と比べて有意に主観的な改善効果があることが示された.

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© 2015 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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