日本耳鼻咽喉科学会会報
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118 巻 , 11 号
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総説
  • 宮本 正章, 高木 元, 久保田 芳明, 桐木 園子, 手塚 晶人, 太良 修平, 清水 渉, 福嶋 善光, 汲田 伸一郎, 田畑 泰彦
    2015 年 118 巻 11 号 p. 1281-1288
    発行日: 2015/11/20
    公開日: 2015/12/11
    ジャーナル フリー
     自己骨髄細胞を用いた血管再生医療は, 難病指定疾患である Buerger 病と閉塞性動脈硬化症 (ASO) の治療抵抗性症例に対して, 安全性に優れ有効性も証明され, わが国再生医療初の高度先進医療 (当時) として承認され, 現在も第2項先進医療技術 【先進医療 A】 に承認されている. さらに末梢血単核球細胞, 末梢血幹細胞を使用した血管再生治療も先進医療技術Aに追加承認された.
     血管再生治療 (先進医療承認) は, 末梢動脈疾患 (PAD) に対する経皮的血管形成術 (PTA), 末梢血管バイパス手術に次ぐ第3の治療法として認識されつつあり (Beyond TASC II), さらに厚生労働省難治性疾患克服研究事業の一つとして, 膠原病の中でも難治性潰瘍・壊疽を合併することが最も多い全身性強皮症 (PSS) に対して研究班で多施設共同研究を実施し, 安全性と有効性を証明した.
     さらに進化させた次世代型血管再生療法として, 血管形成に不可欠な塩基性線維芽細胞増殖因子 (b-FGF) をゼラチンハイドロゲルと混入し, 患肢筋肉内に注射するだけで血管再生可能な「DDS (薬物伝送システム) 徐放化 b-FGF 蛋白による血管再生療法 (2008年内閣府スーパー医療特区分担研究課題)」の臨床研究を実施して安全性と有効性を報告した.
     また最近では, 現在泌尿器科, 消化器外科等で実施されている結石破砕術の約10分の1の低出力 (約 0.09mJ/mm2) の衝撃波 (shock wave) を虚血患肢に当てるだけで血流増加を可能にする新治療法である低出力体外衝撃波治療による血管再生治療を臨床応用し, これも安全性および有意な下肢血流増加効果を証明した.
     このように血管再生治療は治療抵抗性 PAD に対して, 各種の臨床研究を通じて徐々に安全性と有効性が一般に認識され, PTA やバイパス術が不可能な難治性症例の最後に考慮され得るべき最新治療となりつつある.
  • 喉頭枠組み手術
    梅野 博仁, 佐野 仁紀, 千年 俊一, 栗田 卓, 深堀 光緒子, 末吉 慎太郎
    2015 年 118 巻 11 号 p. 1289-1294
    発行日: 2015/11/20
    公開日: 2015/12/11
    ジャーナル フリー
     一色らが確立し体系付けた喉頭枠組み手術である甲状軟骨形成術Ⅰ型, Ⅱ型, Ⅲ型, Ⅳ型と披裂軟骨内転術1)2) の術式, 歴史, 手術適応, 手術評価の検査と手術効果について解説を行った. また, 喉頭枠組み手術の中でも, 特にⅠ型の治療成績向上につながる当科の取り組みを将来展望として解説した. Ⅰ型は一側声帯麻痺などの声門閉鎖不全による嗄声の改善を目的とし, 種々のインプラント材料が喉頭内に充填するフランジとして用いられている. 高度の声門閉鎖不全例には披裂軟骨内転術が併用される場合が多いが, Ⅰ型単独でも治療は可能との報告もある. 高度の声門閉鎖不全例に対するⅠ型単独治療への将来展望として, 喉頭内に充填するフランジの形状をいかにデザインするかが最も重要であることを呈示した. 患者個人の個体差が大きい喉頭形状に合致したフランジ作製を目的に, 患者の頸部 CT 画像の DICOM (Digital Imaging and Communication in Medicine) データから喉頭の三次元モデルを構築し, 理想的な声帯内方移動を実現できるフランジ形状デザインを行い, 患者個人のオーダーメイドフランジ形状を 3D プリンターで出力するシステムの構築を考えた. しかし, 経費の問題により 3D プリンターでフランジを充填する声帯レベルの喉頭モデルの出力を行い, 術中のフランジ作製に利用している. 本稿では 3D プリンターを用いた喉頭出力モデルの手術利用症例を示し, Ⅰ型の将来展望として紹介した.
  • ―頭頸部癌から中耳炎まで―
    吉崎 智一, 室野 重之, 中西 清香, 伊藤 真人, 丸山 裕美子, 三輪 高喜, 白井 明子, 小川 恵子
    2015 年 118 巻 11 号 p. 1295-1300
    発行日: 2015/11/20
    公開日: 2015/12/11
    ジャーナル フリー
     9割以上の医師が漢方薬の処方経験を有するに至っている今日である. 一方で「証」を中心とした診断概念は, 耳鼻咽喉科ならびに各種診療科においても浸透しているとはいいがたい. 本総説では, 最初に嗅覚障害に対する漢方医療として当帰芍薬散を紹介する. つづいて口内炎と舌痛症に対する漢方薬治療について半夏瀉心湯と滋陰至宝湯の有効な症例を解説する. その次に, 漢方薬のずぶの素人らしく「証」は全く無視して, 十全大補湯の有する成分と効能に基づいて当教室が厚労省班研究として施行した頭頸部癌と小児反復性中耳炎に対する多施設共同研究試験の結果について概説する. 特に後者の方の臨床試験の結果は「小児急性中耳炎ガイドライン2013」に反映されることとなった.
原著
  • 田中 是, 菊地 茂, 大畑 敦, 堤 剛, 大木 雅文
    2015 年 118 巻 11 号 p. 1301-1308
    発行日: 2015/11/20
    公開日: 2015/12/11
    ジャーナル フリー
     急性喉頭蓋炎は急速に気道閉塞を引き起こし, 死に至る可能性がある感染症である. 呼吸困難がある症例では速やかに気道確保を行うことは言うまでもないが, 喉頭蓋や披裂部などの腫脹はみられるものの呼吸困難を生じていない症例に対して気道を確保すべきか判断に迷うことが多い. 1998年1月から2014年12月までの17年間に埼玉医科大学総合医療センター耳鼻咽喉科において入院加療を行った急性喉頭蓋炎285例 (男性180例, 女性105例, 平均年齢49.6±16.3歳) についてその臨床像を後方視的に解析した. 咽頭痛は全例にみられ, 呼吸困難感を訴えた症例は62例 (21.8%) であったが, 他覚的に高度な呼吸困難症状を呈した症例は17例 (6.0%) であった. 気道確保を行った症例は27例 (9.5%) であった. また, 喉頭蓋および披裂部の腫脹の程度によって, 急性喉頭蓋炎の重症度を1点から5点まで5段階に重症度スコアとして評価した結果, 他覚的に高度呼吸困難症状を認めた症例および気道確保を要した症例はすべて重症度スコアが4点以上であり, 今後前方視的な検討を要するものの, 重症度スコアは気道確保の適応を決定する上で有用と思われた. さらに, 気道確保を施行した群と施行しなかった群とを比較すると, 前者では有意に初診時の白血球数と体温が高く, 咽頭痛出現から初診までの日数が有意に短かったが, 初診時の血清 CRP 値は両群間で差はなかった.
  • ―アンケートによる自覚的評価結果について―
    熊川 孝三, 神崎 晶, 宇佐美 真一, 岩崎 聡, 山中 昇, 土井 勝美, 内藤 泰, 暁 清文, 東野 哲也, 髙橋 晴雄, 神田 幸 ...
    2015 年 118 巻 11 号 p. 1309-1318
    発行日: 2015/11/20
    公開日: 2015/12/11
    ジャーナル フリー
     伝音難聴および混合性難聴患者に対する正円窓刺激法による人工中耳 (Vibrant Soundbridge® 以下 VSB) の有効性および安全性について13施設による多施設共同治験を実施した. 本報告ではアンケートによる自覚的評価結果, 1日の装用時間,満足度について有効性を検証した.
     対象は補聴器を装用できない, あるいは補聴器適合検査の指針 (2010) に準じて評価するも適合不十分であった18歳以上の両側の難聴例23例である.
     「きこえの評価―補聴前・補聴後―」を用いた解析では, 術前裸耳よりも VSB 装用後20週目で, 有意に主観的な改善効果があることが示された. また,「補聴器の有効性評価簡略化版 APHAB」を用いた解析では, VSB 装用によってコミュニケーションの容易さ, 騒音下での言語理解, 反響音の質問群に関して, 術前裸耳よりも有意に主観的な改善効果があることが示された. ただし, 音に対する不快感の質問群では VSB 装用後に有意に悪化が認められ, 装用に対する慣れが必要と考えられた. 1日の装用時間の平均値は12.0±4.6 (1標準偏差) 時間であり, 満足度の平均は100点満点中77.3±18.0 (同) 時間であった.
     以上より, VSB 装用によって術前裸耳と比べて有意に主観的な改善効果があることが示された.
  • 近藤 英司, 陣内 自治, 大西 皓貴, 川田 育二, 武田 憲昭
    2015 年 118 巻 11 号 p. 1319-1326
    発行日: 2015/11/20
    公開日: 2015/12/11
    ジャーナル フリー
     ACE (angiotensin converting enzyme) 阻害薬は, 副作用である咳反射の亢進により誤嚥を防止して嚥下性肺炎の罹患率を減少させ, 嚥下障害患者の嚥下機能を改善させる. 一方, 外耳道の刺激は迷走神経反射を介して咳を誘発する. また, カプサイシンは TRPV1 (transient receptor potential vanilloid 1) を活性化して知覚神経を刺激する. われわれは以前の研究で, 嚥下障害患者の外耳道へのカプサイシン軟膏刺激が, 嚥下内視鏡検査のスコア評価法により評価した嚥下機能を改善させることを報告した. 本研究では, 以前の研究の嚥下内視鏡検査ビデオ動画を, 患者情報およびスコア評価法の結果を知らない耳鼻咽喉科専門医が独立して SMRC スケールにより評価した. SMRC スケールは嚥下内視鏡検査の評価法であり, 嚥下の4つの機能である咽頭知覚 (Sensory), 嚥下運動 (Motion), 声門閉鎖反射・咳反射 (Reflex), 咽頭クリアランス (Clearance) を別々に評価する. その結果, 外耳道への0.025%カプサイシン軟膏塗布により, 26名の嚥下障害患者の嚥下機能のうち声門閉鎖反射・咳反射が有意に改善し, この効果は塗布後60分後まで持続した. 嚥下機能がより低下している患者の声門閉鎖反射・咳反射は, 外耳道へのカプサイシン軟膏の単回塗布では変化しなかったが, 1週間連日塗布により有意に改善した. この結果から, カプサイシン軟膏による外耳道刺激は, 新しい嚥下障害の治療法として用いられる可能性があり, ACE 阻害薬のように嚥下性肺炎を予防できる可能性も考えられた.
  • 間多 祐輔, 越塚 慶一, 植木 雄司, 今野 昭義
    2015 年 118 巻 11 号 p. 1327-1333
    発行日: 2015/11/20
    公開日: 2015/12/11
    ジャーナル フリー
     われわれは気道狭窄を伴う咽喉頭血管奇形を4例経験した. 内訳は女性3例, 男性1例, 年齢は34~52歳, 血管奇形の部位は中咽頭後壁が2例, 下咽頭 (右披裂喉頭蓋襞) が1例, 中咽頭前壁・側壁・下咽頭が1例であった. 主訴は全例が仰臥位での呼吸困難感であった. 治療は気管切開を施行後に, 全身麻酔下で肉眼あるいはビデオ直達喉頭鏡下に病変を明視下に置いて直接穿刺による硬化療法を行った. 効果は病変が消失した excellent: 1例, 縮小した good: 3例であり, 気管切開も全例閉鎖できた. 治療に伴う重篤な有害事象はなく, ビデオ直達喉頭鏡を用いた硬化療法は咽喉頭の血管奇形に対する治療として有用と考えられた.
最終講義
  • ―内リンパ嚢研究の視点から―
    森 望
    2015 年 118 巻 11 号 p. 1334-1340
    発行日: 2015/11/20
    公開日: 2015/12/11
    ジャーナル フリー
     メニエール病の病態形成に深く関与していると推定されてきた内リンパ嚢に関する香川大学での基礎研究成果からメニエール病の発症機序について論じた最終講義を要約した. 蝸電図検査での特異な電位の報告からメニエール病に興味を持ち, 異常電位の原因を解明するために内耳基礎研究を始めた. ドイツ留学中に行った内リンパ嚢の電気生理学的研究から, 内リンパ嚢はかなり能動的な作用を有することが考えられるようになったため, 香川大学赴任後の研究のメインテーマとして取り上げて研究を推進した. 内リンパ嚢は内リンパ系の中でも蝸牛, 前庭半規管とは異なる直流電位, 電解質組成を持っており, K+ 輸送が重要な蝸牛, 前庭半規管とは異なり, Na+ 輸送が重要であり, aldosterone に関連したイオン輸送体 (thiazide 感受性 Na+-Cl- 共輸送体), 酵素 (11β-hydroxysteroid dehydrogenase 2: 11β-HSD2) の存在が明らかになったことから, aldosterone により内リンパ調節が行われている可能性が浮上してきた. また, catecholamines が β2 作用にて内耳圧を上昇させることが分かり, メニエール病臨床でよく経験されるストレスによる症状悪化に対する基礎研究的な根拠が出てきたといえる. Aldosterone がメニエール病病態形成に関与している可能性が出てきたので, 従来, 欧米にてメニエール病症例に経験的に行われてきた減塩治療における aldosterone の関与を調べるために臨床研究を行った. 減塩治療が十分に行えた症例では血中 aldosterone 濃度の上昇を認め, めまい回数の減少, 聴力の改善がみられた. メニエール病の病態形成 (内リンパ水腫, 内耳圧上昇) には内リンパ嚢が大きく関与しており, メニエール病の症状, 検査所見が変動することも説明できると考えられる.
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