日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
小児鼻疾患の治療
―アレルギー性鼻炎と鼻副鼻腔炎について―
工藤 典代
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2015 年 118 巻 3 号 p. 176-181

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抄録

  小児の鼻疾患の代表は患者数の多さからもアレルギー性鼻炎と鼻副鼻腔炎と考えられる. わが国では, ともに診療ガイドラインが公表されており, それに沿った診療が行われている. 小児専門病院で診療を行っていた経験から, 子どもが自分の症状を医療者に訴えられるのか, 実際に保護者も含め患者側は症状を把握できているのか, と疑問を持っていた. 耳鼻咽喉科診療所の協力を得て, 調査したところ, 患者側の症状の程度と医師側の鼻所見とは乖離があることが分かった. ことばで表現することが難しい小児の診療では, 「子どもは正確に症状を訴えられない」ことを理解した上で, 鼻治療を進める必要がある.
  アレルギー性鼻炎の診断においては, 小児特有の症状 (physical sign) と鼻所見を把握するのが重要と考えている. 小児を対象に, 検査所見や鼻所見との関係を調査した結果, 鼻汁中好酸球数が (+ + +) の際には, 鼻粘膜の色調が蒼白であった. そのことから, 詳細に鼻症状を問診し, 鼻粘膜の色調を把握し, 鼻汁中好酸球数を参考にしてアレルギー性鼻炎の診断を行っている.
  アレルギー性鼻炎の症状の中で, 鼻閉は最も気になる症状の一つである. 保存治療に抵抗する高度の鼻閉に対しては, 下鼻甲介粘膜下切除術を行っている. 経年的な鼻症状の変化を調査したところ, 3年後も鼻閉などの鼻症状の改善に大きな効果が得られることが分かった.
  鼻副鼻腔炎では「診療ガイドライン」や「副鼻腔炎診療の手引き」があり, それらを参考に診療を進める. 鼻疾患の治療には鼻汁吸引や自然口開大処置などの局所処置が重要である. 鼻汁吸引は頻回に実施したいところであるが, 通院できない場合は,家庭でできる鼻汁吸引を勧めている.

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© 2015 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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