日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
総説
歯周組織再生の最前線
長澤 敏行
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 118 巻 5 号 p. 623-628

詳細
抄録

 歯周組織とはセメント質, 歯根膜, 歯槽骨, 歯肉から構成される歯を支える組織である. 歯周病はプラークバイオフィルムによる慢性の炎症性疾患であり, 炎症が歯肉に限局した歯肉炎と, 歯根膜や歯槽骨が破壊される歯周炎に大別される. 歯肉炎は適切な口腔清掃で治癒するが, 歯周炎で失われた組織はプラークを除いただけでは再生は期待できない. 現在の歯周組織再生療法の基盤となったのは, 上皮細胞の深行増殖を遮蔽膜で妨げることで歯根膜と骨の再生を促す組織再生誘導法 (Guided Tissue Regeneration) の開発である. 続いて歯胚の分化の過程で歯根の形成時に分泌されるエナメル基質蛋白が臨床応用され, ブタの歯胚からエナメル基質蛋白を精製した製品が販売されている. 遺伝子工学の進展とともに再生療法にサイトカインを用いる研究が成され, 米国では PDGF, BMP-2 が既に臨床応用されている. 日本では世界に先駆けて FGF-2 の歯周組織再生への応用が研究され, 臨床治験が行われている. 培養細胞を用いた再生治療がさまざまな分野で応用され始めているが, 歯周組織再生においても既に培養歯根膜シートをはじめ, いくつかの臨床試験が始まっている. 実際の臨床において効果的な歯周組織再生を行うために外科的手技も変遷を遂げており, 歯周組織の欠損部への血液供給と創面の安定を求める minimal intervention surgery が推奨されている.

著者関連情報
© 2015 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
次の記事
feedback
Top