鼻閉は閉塞性睡眠時無呼吸 (OSA) の危険因子として知られている. 鼻腔開存性を評価する客観的な検査法として, 鼻腔通気度計や音響鼻腔計測法 (AR) などが行われてきたが, OSA との直接的な関連性は議論が分かれるところである. 現在のところ, 鼻腔の検査は通常覚醒時, 座位にて行われており, 睡眠時の状態と異なることが予想される. そこでわれわれは, 薬物鎮静下の鼻腔の状態が睡眠時の状況に近似していると想定した. そして薬物鎮静下にARを施行し, 覚醒時座位,仰臥位に行った検査所見と比較した.
対象は当院の耳鼻咽喉科一般診療において経口挿管で全身麻酔下の手術が決定した20歳以上の患者50名とした. AR を用いて座位, 仰臥位, 薬物鎮静下と異なる条件で, 最小鼻腔断面積と鼻腔容積を算出し, 比較検討した.
その結果, 薬物鎮静下の最小鼻腔断面積, 鼻腔容積はともに, 座位, 仰臥位の値に比べ有意に減少していた. また鼻腔容積において座位から仰臥位の差は, 仰臥位から薬物鎮静下の差に比べ有意に大きかった. つまり鼻腔容積は薬物鎮静による状態変化よりも, 座位から仰臥位への体位変化の方が, 影響が大きい可能性が示唆された.
同様の変化はおそらく睡眠時の鼻腔開存性にも生じるものと思われ, この変化が睡眠時呼吸障害の病態といかに関連するかということを今後検討していく必要がある.
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