日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
シスプラチン使用後に塩類喪失性腎症による著しい低ナトリウム血症を来した中咽頭癌症例
藤川 太郎白倉 聡畑中 章生岡野 渉得丸 貴夫山田 雅人齊藤 吉弘別府 武
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2015 年 118 巻 8 号 p. 1046-1052

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抄録

 癌治療において低ナトリウム血症はしばしば遭遇する電解質異常である. 今回われわれは, 中咽頭癌進行症例に対してシスプラチン (CDDP) 同時併用放射線治療を行い, 計3回の grade 4 の低ナトリウム血症を経験したので報告する. 初回および2回目の低ナトリウム血症は CDDP 投与後に出現し, 脱水と多尿を伴い, 輸液と塩分の補充により1週間程度で改善した. ナトリウムの排泄過剰の所見から塩類喪失性腎症が原因であると考えられた. 3回目の低ナトリウム血症の原因であった抗利尿ホルモン不適合分泌との比較から, 細胞外液量とナトリウムバランスの評価が低ナトリウム血症の鑑別と適切な治療において極めて重要であると考えられた.

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© 2015 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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