2015 年 118 巻 9 号 p. 1133-1142
ANCA 関連血管炎性中耳炎 (OMAAV) は, 難聴を初発症状として耳鼻咽喉科を受診する機会の多い疾患であるが, 早期の確定診断は必ずしも容易ではない. 今回われわれは, OMAAV (疑い例含む) 14名の血清を, 抗原固相法の異なる ANCA 試薬7種類および間接蛍光抗体法を用いて検査し, 測定試薬の精度やカットオフ値による ANCA 検出率の差の有無について検討し, 早期診断の可能性について考察した.
症例は女性11例, 男性3例で年齢中央値は68.5歳であった. PR3-ANCA 陽性例4例, MPO-ANCA 陽性例6例, 両 ANCA 陰性例は4例存在した. 初診時または経過中に肥厚性硬膜炎を合併した症例は6例, 顔面神経麻痺を合併した症例は5例存在した. 新しい OMAAV 診断基準 (案) を用いると, 14例中10例 (71.4%) は確実例であった.
血清学的検討では, 臨床検査で ANCA 陽性であった症例は6例 (42.9%) であったが, 複数の ELISA および IIF を用いたところ, ANCA 陽性が証明された症例は9例 (64.3%) へ増加した. ANCA 陰性例に対して, 補助検査として複数の ELISA キットによる検査や間接蛍光抗体法が有効であった症例が存在した.
以上の結果から, OMAAV 診断基準案の活用, 異なる複数の ELISA キットによる検査が早期診断につながり得ると考えた.