日本耳鼻咽喉科学会会報
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118 巻, 9 号
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総説
  • 澤 芳樹
    2015 年 118 巻 9 号 p. 1111-1117
    発行日: 2015/09/20
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
     重症化した心筋症に対し, 心臓移植や人工心臓などいわゆる置換型治療が積極的に行われているが, 世界的にもドナー不足や合併症など課題も多い. わが国においては極端なドナー不足から, 普遍性のある医療には至っていないのが, 現状である. 最近, 心機能回復戦略として, 再生型治療の研究が盛んに行われ, 自己細胞による臨床応用が開始されている. われわれは, 温度感応性培養皿を用いた細胞シート工学の技術により, 細胞間接合を保持した細胞シート作製技術を開発し, 心筋再生治療の臨床研究を開始した. さらに, iPS 細胞を用いた心血管再生治療も期待され, iPS 細胞の樹立をきっかけとして, 世界中で幹細胞研究が活性化され, iPS 細胞を用いた心血管再生医療が現実的なものとなると思われる. さらに, 疾患別 iPS 細胞の樹立も盛んに行われるに至っており, 近い将来, 自己細胞移植や組織工学的技術を駆使することにより, 心臓移植や人工心臓治療とともに再生治療によって重症心筋症治療体系が確立されるであろう.
原著
  • 朝蔭 孝宏, 安藤 瑞生, 吉田 昌史, 斉藤 祐毅, 小村 豪, 山岨 達也
    2015 年 118 巻 9 号 p. 1118-1123
    発行日: 2015/09/20
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
     当院では下咽頭癌 T1/T2 症例に対して経口的切除術を, T2/T3 症例にドセタキセルを用いた導入化学療法を行ってきた. 下咽頭癌の喉頭温存の現状を明らかにすることを目的として検討を行った. 下咽頭癌83例を後ろ向きに解析した. 原発の亜部位は PS 61例, PW 13例, PC 9例であった. T 分類は T1/T2/T3/T4 がそれぞれ14/29/23/17例であった. 治療としては, T1 に対しては経口的切除, 放射線治療が, T2 に対しては放射線治療, 導入化学療法+放射線治療, 部分切除が, T3 に対しては導入化学療法+放射線治療, 咽喉食摘が, T4 に対しては咽喉食摘, 化学放射線療法が主に行われた. T1/T2/T3/T4 における治療5年時の喉頭温存率はそれぞれ100%/73%/39%/35%であった. 今回の方法で生存率を落とすことなく, 喉頭温存率を改善することができた. しかし T3 症例では再発, 原病死が多く治療強度を上げる必要があると考えた.
  • 山本 哲夫, 朝倉 光司, 白崎 英明, 氷見 徹夫
    2015 年 118 巻 9 号 p. 1124-1132
    発行日: 2015/09/20
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
     【目的】札幌周辺ではシラカバ花粉アレルギーの例が多く, 共通抗原性のため, リンゴなどの果物や野菜を食べた時に口腔咽頭の過敏症 (口腔アレルギー症候群, oral allergy syndrome, OAS) を示す例が目立つ. 一方, 大豆はシラカバ花粉の主要抗原である Bet v 1 の関連抗原 (Gly m 4) を含んでおり, OAS の原因抗原となることがある. 特に豆乳は凝固して豆腐になる前の状態であるが, 変性が少なく, また液体で一気に飲み込むためか, 前胸部の灼熱感など, 症状の強い例を経験する. 今回, 豆乳に対する OAS の頻度を調査し, IgE 抗体検査も行った.
     【方法】対象はシラカバ花粉 IgE が陽性の OAS 例167例で, OAS の診断は問診により, 特異的 IgE は CAP を用いた. このうち161例に対し, コンポーネントアレルゲンと大豆に対する CAP を検査した.
     【結果】シラカバ陽性の OAS 167例のうち, 問診上10% (16例) が豆乳に対する OAS を有し, シラカバ CAP クラスの増加とともに有症率が上昇した. また, Bet v 1 CAP, Gly m 4 CAP, 大豆 CAP クラスの増加とともに豆乳 OAS の有症率が上昇したが, Bet v 2 CAP は相関はなかった. 豆乳 OAS 例 (15例) では, 大豆 CAP はクラス1以上は47% (7例) で, クラス2以上では7% (1例) が陽性であったが, Gly m 4 CAP はクラス1以上は93% (14例) で, クラス2以上でも87% (13例) が陽性であった.
     【結論】シラカバ陽性の OAS 例のうち, 10%が豆乳に対する OAS を有し, 豆乳 OAS 例では大豆 CAP の陽性率は低かったが, Gly m 4 CAP の陽性率は高かった.
  • ―OMAAV14症例の血清学的検討―
    立山 香織, 児玉 悟, 能美 希, 鈴木 正志, 岸部 幹, 原渕 保明
    2015 年 118 巻 9 号 p. 1133-1142
    発行日: 2015/09/20
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
     ANCA 関連血管炎性中耳炎 (OMAAV) は, 難聴を初発症状として耳鼻咽喉科を受診する機会の多い疾患であるが, 早期の確定診断は必ずしも容易ではない. 今回われわれは, OMAAV (疑い例含む) 14名の血清を, 抗原固相法の異なる ANCA 試薬7種類および間接蛍光抗体法を用いて検査し, 測定試薬の精度やカットオフ値による ANCA 検出率の差の有無について検討し, 早期診断の可能性について考察した.
     症例は女性11例, 男性3例で年齢中央値は68.5歳であった. PR3-ANCA 陽性例4例, MPO-ANCA 陽性例6例, 両 ANCA 陰性例は4例存在した. 初診時または経過中に肥厚性硬膜炎を合併した症例は6例, 顔面神経麻痺を合併した症例は5例存在した. 新しい OMAAV 診断基準 (案) を用いると, 14例中10例 (71.4%) は確実例であった.
     血清学的検討では, 臨床検査で ANCA 陽性であった症例は6例 (42.9%) であったが, 複数の ELISA および IIF を用いたところ, ANCA 陽性が証明された症例は9例 (64.3%) へ増加した. ANCA 陰性例に対して, 補助検査として複数の ELISA キットによる検査や間接蛍光抗体法が有効であった症例が存在した.
     以上の結果から, OMAAV 診断基準案の活用, 異なる複数の ELISA キットによる検査が早期診断につながり得ると考えた.
  • 門脇 嘉宣, 平野 隆, 能美 希, 鈴木 正志
    2015 年 118 巻 9 号 p. 1143-1149
    発行日: 2015/09/20
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
     Large cell neuroendocrine carcinoma (以下 LCNEC) は1991年に肺の悪性腫瘍の一つとして病態が確立されたが, 他臓器での発症はまれであり, 頭頸部の粘膜においても22例のみの報告である. 今回, われわれは64歳男性の口蓋扁桃に発生した LCNEC の1例を経験した. 手術加療に放射線化学療法を併用し, 治療後36カ月の時点で無病生存中である.
     近年, 頭頸部 LCNEC はより悪性度の高い分類への見直しが求められている上, 症例数の少なさからいまだに標準的治療も確立されていない. 診断や分類を見直して正確な診断を行うことで, 今後の治療評価の進展も期待できると考えられる.
  • 森 香織, 石岡 孝二郎, 山崎 洋大, 植木 雄志, 窪田 和, 松山 洋, 山本 裕, 堀井 新, 髙橋 姿
    2015 年 118 巻 9 号 p. 1150-1154
    発行日: 2015/09/20
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
     症例は62歳, 女性. 2012年12月, のどの違和感のため多量に飲水するようになった. 2013年10月, 呼吸不全から JCS200 の意識障害を来し当院に救急搬送された. CT で食道の拡張と気管の閉塞を認め, 気管内挿管により呼吸状態は改善したが, 抜管困難と判断し気管切開を施行した. 気管切開後の気管内腔は, 咳嗽に伴い変形狭窄し, 膜様部の縦縞や気管軟骨輪も消失し, 頻回の呼吸困難発作もみられるため, 気管軟化症と診断した. 気管切開時に生検した気管軟骨の病理所見と抗Ⅱ型コラーゲン抗体陽性所見より, 気管軟化症で初発した再発性多発軟骨炎と診断した. 本症例の病態につき, 文献的考察を加え報告する.
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