急性内耳障害を中心とした感音難聴に関する病態, 検査, 治療など最近の知見について総説としてまとめた.
多施設共同で行われた解析では突発性難聴の予後に関連する血液検査項目としてフィブリノゲンが挙げられた. また, 聴力型に応じて予後に関連する血液項目が異なっており, 病態が異なることが示唆された. さらに PDE5 阻害薬による突発難聴の発生から最近新たに提唱されている突発性難聴の病態機序を紹介した. その病態と, フィブリノゲン, 細胞ストレスに関する転写因子などを含んだ新しい病態について仮説を提唱した.
今後期待されるような薬物治療として抗酸化物質などの基礎研究の現状を挙げた. また急性感音難聴が一側高度難聴に至る場合に人工内耳埋込み術がヨーロッパでは行われており, その成果について報告をまとめた. 国内でも今後実施されることが期待される.
ステロイド, 特に糖質コルチコイドは内耳に保護的に作用することが明らかになってきている. 同時に突発性難聴などに対するステロイドの局所投与が見直されている. 今後期待される治療薬は副作用の観点から内耳局所に投与を行うことが重要である. ところが全身と局所投与について内耳への薬物動態が不明である. それぞれの投与法に応じて基礎的データから臨床的意義について論じた. 局所と全身投与では薬物動態が異なるため, 両者併用が薬物を内耳に到達させるために効果的である. また, 全身投与では多量の方がより内耳に到達することが示唆された.