日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
舌下免疫療法の最新知見―スギ花粉症を中心に―
湯田 厚司
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2017 年 120 巻 11 号 p. 1305-1310

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抄録

 スギ花粉の舌下免疫療法が保険適用となり3シーズンが経過した. 当院では3年間に本邦で最も多いとされる455例 (初年度225例, 2年目134例, 3年目96例) の舌下免疫療法を導入しており, 当院で最近集積できた成績を中心に最近の話題を概説する.

 治療当初は脱落率とアドヒアランスが懸念されていたが, 2014年に初めて開始した例での1年目の脱落率は約3%で, 2年間でも約7%と低かった. 服薬アドヒアランスは, 治療1年目で89%, 2年目で81%と良好であった. 全例に完璧なアドヒアランスを求めるには無理があるが, 70~75%のアドヒアランスを保てるか否かで症状にも有意な差が認められたので, ある程度のアドヒアランス維持を求めたい.

 本治療で最も注意が必要なことが, 副反応への対応である. 詳細な問診によるシダトレン® の副反応率は40.5%であったが, いずれも軽微な副反応であり, 過度の心配をする必要には至っていない. 治療を中止する副反応は経験していないが, 慎重に対応すべき副反応や偶発症もある. 気管支喘息発作と急性蕁麻疹を偶発した場合には中断も考慮したい. 治療継続可能であっても, 副反応としての長引く咳と好酸球性食道炎症状には継続の可否を考えたい.

 われわれは多数例の治療による臨床効果を報告してきた. 過去3年間の成績では, すべての年で舌下免疫は皮下免疫と同等の効果があり, 初期療法, 飛散後治療や未治療よりも有意に良好な成績を示した. また, 1年目よりも2年目で有意に効果が増強されていた. ただし, ヒノキ花粉症には効果のない例も多いので注意が必要であった. 自験例と海外データなどを踏まえて2年間の治療期間では不十分と考え, できれば4~5年間の治療を目標にしたいと考えている.

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