日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
めまいリハビリテーションと漢方薬の選択について
新井 基洋
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2017 年 120 巻 12 号 p. 1401-1409

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抄録

 めまいの治療には大きく分けて薬物治療, 薬物治療以外がある. 近年, めまい治療における薬物治療以外の代表が良性発作性頭位めまい症 (Benign paroxysmal positional vertigo; BPPV) の Epley 法などの頭位治療である. しかし, それ以外のめまい疾患への対応であるめまいのリハビリテーション (以下めまいリハ) は十分施行されているとは言えない. 一方, 薬物治療に医師が限界を感じている代表的疾患に, 前庭神経炎後遺症やハント症候群の後遺症, 繰り返す非典型的眼振を認める Possible BPPV, 加齢性平衡障害等が挙げられる. これらの薬物治療では効果が不十分なめまい, 平衡障害に対し, 当院ではめまいリハを積極的に施行している. めまいリハは慢性めまいの治療には有効で, 特に自覚的なめまい感には有効であるというエビデンスを認める. 本邦全体では積極的には施行しているとは言えないめまいリハは今後のめまい治療として取り組む余地が大いにある. よって, 前半はその代表的めまいリハの方法を図を用いて解説した.

 一方, めまいの治療の基本は薬物治療である. しかし, わが国では約40年間にわたり新しいめまい治療薬が上市されていないのが現状である. よって, めまいの治療にはめまいの保険病名を持つ使用可能な薬剤を組み合わせて用いるなど治療上の工夫が必要である. ところで, めまいの保険病名の適応を持つ薬剤に漢方薬がある. しかし, めまい薬物治療として十分に普及しているとは言えない. この背景には患者の証を診て薬剤を選択するという漢方処方の特徴と, その点に困難を感じる漢方非専門医が医師の大多数を占めているという状況がある. そこで, 後半はめまい専門医の立場から漢方薬の有効性と漢方非専門医にとって証の替わりとなる臨床的所見について検討結果を通じて紹介する. 具体的には, めまいの代表的薬剤である半夏白朮天麻湯の治療効果とめまいに伴う精神症状の改善効果を有する補中益気湯の有用性を西洋医学的観点から解説した.

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