日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
指定難病 遅発性内リンパ水腫
將積 日出夫
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2018 年 121 巻 10 号 p. 1243-1249

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抄録

 遅発性内リンパ水腫は先行する高度感音難聴にメニエール病様のめまい発作あるいは対側の聴力変動を来す疾患群である. 先行する高度難聴耳と内リンパ水腫症状の原因耳の関係から同側型, 対側型に分けられる. 平成26年5月に「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法) が制定され, 遅発性内リンパ水腫は第2次指定難病 (平成27年7月1日施行) に選定された.「難病法」による医療費助成の対象となるのは, 原則として「指定難病」と診断され,「重症度分類等」に照らして病状の程度が一定度以上の場合である. 遅発性内リンパ水腫の診断基準は, A. 症状 (4項目), B. 検査所見 (5項目), C. 鑑別診断からなる. 指定難病には症状の4項目および検査所見の4項目に該当する確実例のみである. 遅発性内リンパ水腫の重症度分類は A. 平衡障害・日常生活の障害, B. 聴覚障害, C. 病態の進行度の3項目がある. 医療費助成の対象となるのは, 平衡障害では両側の半規管麻痺, 聴覚障害では両側 40dB 以上, 病態の進行度では不可逆性病変が高度に進行して後遺症を認めるものと定義されている.

 遅発性内リンパ水腫の治療としては, 保存的治療として有酸素運動等の生活指導, 心理的アプローチ, 浸透圧利尿剤等の薬物治療, 機能保存的手術治療として内リンパ嚢開放術, 選択的前庭機能破壊術として内耳中毒物質鼓室内注入, 前庭神経切断術が行われている. 近年, その治療選択として低侵襲の治療から開始し, 有効性が確認されない場合に, 次の段階へ進む段階的治療選択法が提唱された. 中耳加圧療法は, 保存的治療に抵抗した難治例に対して手術治療の前に考慮される新しい治療法である. 新型鼓膜マッサージ機は経済産業省平成24年度課題解決型医療機器等開発事業「難治性メニエール病のめまい発作を無侵襲的に軽減する医療器機の開発」により作成され, 平成29年9月に中耳加圧装置として一般的名称がつけられた.

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© 2018 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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