日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
学齢期にある人工内耳装用児の構音に関する検討
白井 杏湖齋藤 友介河野 淳冨澤 文子野波 尚子鮎澤 詠美塚原 清彰
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2018 年 121 巻 3 号 p. 201-209

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抄録

 人工内耳装用児の音声を意思伝達手段とした学校生活の実現には, 良好な聴取能に加え, 明瞭な構音が必要となる. 他方, 本邦では人工内耳装用児の構音発達の長期追跡研究はほとんどみられない. 本研究では小学4年生から中学3年生までの人工内耳装用児を対象とし, 構音 (発話明瞭度) の実態と, その関連要因について検討した.

 聴覚印象に基づき構音成績 (発話明瞭度) を5段階で評価 (SIR) し, 手術時年齢, 装用期間, 評価時年齢, 装用閾値, 単語聴取能, WISC による言語性および動作性知能指数, 国語学力, 教育機関との関連を検討した.

 対象は84例, 評価時年齢は平均13歳, 手術時年齢は平均4.3歳, 装用期間は平均8.6年で, ろう学校に43人, 通常学級に41人在籍していた. 構音成績は平均4.2 (5が最も良好) で, 全体の6割の構音が明瞭 (評定5) であった. 語音明瞭度は平均82.6%とおおむね良好であった.

 聴取能, 教育機関, 言語性知能指数, 手術時年齢, 装用閾値, の順に強く構音成績と有意に相関していた. 他方, 生活年齢, 装用期間, 動作性知能, 国語学力との関連は確認されなかった. また, 上記の5つの変数を独立変数とした重回帰分析の結果, 1. 聴取能と, 2. 教育機関, 3. 手術時年齢という3つの変数により, 学齢期の構音成績の約50%を説明できることが明らかにされた. さらに, 各変数の影響を吟味すると, 聴取能の影響が最も大きく, 次いで教育機関, 術時年齢の順で影響していた.

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© 2018 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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