日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
アンチエイジングへの挑戦
加齢と眼疾患 : キーワードはアンチエイジング !
明田 直彦川島 素子
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2018 年 121 巻 7 号 p. 853-860

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抄録

 眼科領域の多くの疾患は加齢によってその罹患率が上昇する. 加齢によって誰もが罹患する疾患の代表例は白内障であり, その予防には紫外線対策や生活習慣の改善が重要と考えられている. 進行した白内障に対しては, 白内障手術によって濁った水晶体を眼内レンズに置き換えることで, 視力のみならず運動機能や認知機能の改善が実現できる. つまり, 白内障は治療することによって患者を若返らせることができる数少ない疾患と言える. ほかに加齢に関連する疾患に加齢黄斑変性があり, 進行すると主に中心視力の低下を招き, Quality of Life (QOL) が著しく障害される. しかし, 現在の医学では障害された網膜を取り換えられず, 治療には定期的な眼内注射が必要になる. やはり加齢黄斑変性に対しては予防が何よりも重要であり, 具体的には禁煙・適切な食生活・適度な運動が大切である. ドライアイは失明疾患ではないが, 罹患率が非常に高く, 眼不快感や視機能異常などによる QOL 低下や労働生産性の低下を生じる加齢性疾患のひとつである. 治療の基本は点眼であり, 数年前より国内発の新作用機序のドライアイ治療薬が2剤使用できるようになり, 治療成績および患者満足度を上げることができるようになっている. さらには, ドライアイは環境因子の影響を受ける多因子疾患であることから, 眼局所の治療だけでなく, 環境因子の改善や生活習慣の改善など包括的なアプローチが有効であることが分かってきている. 本稿では, 加齢と密接な関係にある眼疾患3つ (白内障, 加齢黄斑変性, ドライアイ) を取り上げ, それぞれの疾患と治療について加齢の視点を元に概説する.

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