日本耳鼻咽喉科学会会報
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121 巻 , 7 号
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総説
  • 明田 直彦, 川島 素子
    2018 年 121 巻 7 号 p. 853-860
    発行日: 2018/07/20
    公開日: 2018/08/01
    ジャーナル フリー

     眼科領域の多くの疾患は加齢によってその罹患率が上昇する. 加齢によって誰もが罹患する疾患の代表例は白内障であり, その予防には紫外線対策や生活習慣の改善が重要と考えられている. 進行した白内障に対しては, 白内障手術によって濁った水晶体を眼内レンズに置き換えることで, 視力のみならず運動機能や認知機能の改善が実現できる. つまり, 白内障は治療することによって患者を若返らせることができる数少ない疾患と言える. ほかに加齢に関連する疾患に加齢黄斑変性があり, 進行すると主に中心視力の低下を招き, Quality of Life (QOL) が著しく障害される. しかし, 現在の医学では障害された網膜を取り換えられず, 治療には定期的な眼内注射が必要になる. やはり加齢黄斑変性に対しては予防が何よりも重要であり, 具体的には禁煙・適切な食生活・適度な運動が大切である. ドライアイは失明疾患ではないが, 罹患率が非常に高く, 眼不快感や視機能異常などによる QOL 低下や労働生産性の低下を生じる加齢性疾患のひとつである. 治療の基本は点眼であり, 数年前より国内発の新作用機序のドライアイ治療薬が2剤使用できるようになり, 治療成績および患者満足度を上げることができるようになっている. さらには, ドライアイは環境因子の影響を受ける多因子疾患であることから, 眼局所の治療だけでなく, 環境因子の改善や生活習慣の改善など包括的なアプローチが有効であることが分かってきている. 本稿では, 加齢と密接な関係にある眼疾患3つ (白内障, 加齢黄斑変性, ドライアイ) を取り上げ, それぞれの疾患と治療について加齢の視点を元に概説する.

  • 上田 勉, 卜部 祐司
    2018 年 121 巻 7 号 p. 861-868
    発行日: 2018/07/20
    公開日: 2018/08/01
    ジャーナル フリー

     拡大内視鏡や narrow band imaging (NBI) を代表とする画像強調観察法など内視鏡診断法の進歩により, 多くの頭頸部表在癌の発見ができるようになった現在, ほぼ無症状の頭頸部表在癌を発見することにおいて, 内視鏡診療科医の存在は大変重要である.

     経口的咽喉頭手術に際しても, 耳鼻咽喉科・頭頸部外科医が単独で行っている施設もあれば, 内視鏡診療科医と合同で, 主に耳鼻咽喉科・頭頸部外科医が切除する施設や内視鏡診療科医が主に切除する施設などとさまざまと思われるが, いずれの場合にしても内視鏡診療科の協力は必須と思われる. 今回当院で行っている経口的咽喉頭手術を中心に, 手術適応の決定, 手術器機, および安全確実に手術を遂行するために心がけていることについて解説する.

     耳鼻咽喉科・頭頸部外科で頭頸部表在癌を発見した場合は, 重複癌の精査も含めて内視鏡診療科へ上部消化管内視鏡 (esophagogastroduodenoscopy: EGD) の依頼をし, 頭頸部表在癌の再評価をしてもらう. 内視鏡診療科で頭頸部表在癌を発見した場合は, 耳鼻咽喉科・頭頸部外科へ紹介してもらう.

     当院内視鏡診断科では, 咽喉頭の内視鏡検査に際してもほかの内視鏡検査と同様に一定の観察の仕方で見落としのないように行っており, 解像度の高い画像で早期発見や深達度診断の重要な役割を担っている.

     当院では, 腫瘍を認めた場合, 精査を行い, 頸部リンパ節転移のない表在癌を経口的咽喉頭手術の適応として, 彎曲型咽喉頭直達鏡で視野展開をした後に経口的に鉗子や電気メスを挿入し, 内視鏡補助下の手術 endoscopic laryngo-pharyngeal surgery (ELPS) を行っている. 術後は1年目に4カ月毎の EGD を行い, 徐々に間隔を長くするよう観察を行っている.

     経口的咽喉頭手術の適応が拡大してきている中, 安全確実に頭頸部表在癌治療を遂行するためには, 内視鏡診療科と耳鼻咽喉科・頭頸部外科との連携は勿論のこと, それぞれの施設の状況にあった他科連携による診療体制を構築し, 患者の不利益にならない治療を提供できることが望ましいと思われる.

  • 太田 伸男
    2018 年 121 巻 7 号 p. 869-875
    発行日: 2018/07/20
    公開日: 2018/08/01
    ジャーナル フリー

     日常診療で遭遇する頻度の高い, 鼻閉を主訴とする鼻疾患にはアレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎などの良性の炎症性疾患から悪性腫瘍までさまざまな疾患がある. 限られた人的かつ時間的なリソースの中で, 鼻閉を主訴とする患者を的確に診断し適切な治療介入を可及的速やかに行うことが極めて重要である. そのためには鼻症状や鼻所見などの総合的な判断だけでなく, 画像診断, 血液検査や病理組織検査等も考慮する必要がある. 本稿では, 1) 鼻閉の QOL に及ぼす影響, 2) 鼻閉を主訴に外来を受診した症例の具体的な対応方法のポイント, 3) その中で外来から帰してはいけない症例の見分け方, 4) 後悔しないために行っておくべき検査, 5) 入院による精査加療が必要なケースについて紹介のタイミングやそれに伴う重要なポイントを概説する. 特に高度な炎症や腫瘍による鼻閉を有する緊急性の高い症例では, 症状や重症度に応じて酸素, 全身的なステロイドの投与も考慮すべきであり, 患者紹介の時点で行っておくべき処置, 投薬が必要となる. 患者の紹介はあらゆる施設間で行われ, 診療機能の連携によって質の高い医療が提供される. 鼻閉を有する患者の望ましい紹介は, その目的を明確にすると同時に適切な時期に行うことである.

  • 吉川 衛
    2018 年 121 巻 7 号 p. 876-881
    発行日: 2018/07/20
    公開日: 2018/08/01
    ジャーナル フリー

     慢性副鼻腔炎に対する内視鏡下鼻内副鼻腔手術 (endoscopic sinus surgery: ESS) は, 中鼻道自然口ルート経由で各副鼻腔を可及的に開大し, 洞内の換気と排泄機能を促して病的粘膜の正常化をはかる術式である. 特に, 前・後篩骨蜂巣の隔壁を完全に除去し篩骨洞を単一の空洞にする単洞化が重要である. また, ESS では病的粘膜の上皮と粘膜下組織は鉗除するが, 粘骨膜は残して骨を露出しない. 粘骨膜をすべて除去してしまうと術後長期にわたり線毛が再生せず, 痂疲の付着や感染に伴う不良肉芽により良好な治癒を導けない. 副鼻腔粘膜を可及的に温存することで, 残存した粘膜下組織や粘骨膜の上に健全な粘膜上皮が再生され, 副鼻腔を生理的な空洞性治癒に導くことができる. この粘膜温存が, 副鼻腔炎に対する ESS において最も大切なコンセプトである.

     ところが, このような的確な手術を行う上で, 副鼻腔が頭蓋や眼窩と隣接しており, 解剖学的なバリエーションも多いことが大きな問題となる. 必要な準備を怠ると, 血管損傷だけでなく視器損傷や髄液漏などの重篤な術中副損傷を引き起こしてしまう. そのため, 安全で確実な手術を行うためには, 1) 術前 CT 画像により解剖学的な特徴を確認する, 2) 手術操作の方向の意識を持つ, 3) 良好な術野の確保を心掛ける, 4) 鉗子の適切な選択と操作を心掛ける, 5) 解剖学的な安全領域と危険領域を認識する, 6) ナビゲーションシステムの利用も考慮するなどの点に留意する必要がある.

  • 丹生 健一
    2018 年 121 巻 7 号 p. 882-886
    発行日: 2018/07/20
    公開日: 2018/08/01
    ジャーナル フリー

     わが国は世界に類を見ない高齢化社会を迎え, 今や頭頸部がん患者の3分の1を75歳以上の後期高齢者が占めるようになった. 加齢による身体機能の低下, 併存症・合併症, 認知障害などの制約の中で, 余命や社会的背景, 人生観などさまざまな要因を考慮して一人一人に最適な治療を提供することが求められる. 腎機能障害や心疾患を伴う症例ではシスプラチンの使用を, 肺疾患の既往がある症例ではセツキシマブの使用を控える. 外科的治療では術後に化学放射線療法を行わなくて済むよう, 原発巣・頸部ともに根治的な術式を選択し, 認知機能や全身状態が不良な症例では, 喉頭温存手術の適応は慎重に検討する. あえて治療しないという選択も含め, 自分らしく生きられる時間, 家族とともに過ごせる時間をできるだけ長く確保することも大切な目標である.

原著
  • 杢野 恵理子, 諸角 美由紀, 生方 公子, 田島 剛, 岩田 敏
    2018 年 121 巻 7 号 p. 887-898
    発行日: 2018/07/20
    公開日: 2018/08/01
    ジャーナル フリー

     肺炎球菌結合型ワクチン (PCV) の世界的な普及は肺炎球菌感染症への劇的効果とともに肺炎球菌自体の変化をもたらした. 肺炎球菌は急性中耳炎 (AOM) の主な起炎菌の1つであり, その動向は AOM 診療にも影響を及ぼす. われわれは, PCV 普及後の AOM の現状を明らかにするため, 2016年7月から全国調査を実施し, 小児 AOM 患者529例 (PCV 接種率97%) を対象に起炎菌, 肺炎球菌血清型, 患者背景等について検討を行った. 検出された菌はインフルエンザ菌が57%と過半数を占め, 次いで肺炎球菌26%, 黄色ブドウ球菌8%, A 群溶血性レンサ球菌3%, モラクセラ・カタラーリス1%であった. 肺炎球菌の血清型は15A 型15%, 35B 型12%, 3型11%の順に多く, 13価 PCV に含まれる血清型の割合は16%と低かった. 患者背景は2歳未満が61%を占め, 重症例81%, 反復・遷延例45%, 保育園児72%, 鼻副鼻腔炎合併例55%と AOM 難治化の危険因子が高率に認められた. ガイドライン推奨抗菌薬が97%の症例に使用され, そのうち67%が一次治療薬で治癒していた. PCV 普及後, 小児 AOM の起炎菌はインフルエンザ菌が優勢となったが, 患者背景や治療効果に明らかな変化は認められなかった. 今後の AOM 診療は, インフルエンザ菌の検出頻度増加を念頭におきながら, 引き続き患者背景や起炎菌の薬剤感受性を考慮した治療選択を行うことが重要と考える.

  • 江口 博孝, 端山 昌樹, 前田 陽平, 武田 和也, 津田 武, 猪原 秀典
    2018 年 121 巻 7 号 p. 899-904
    発行日: 2018/07/20
    公開日: 2018/08/01
    ジャーナル フリー

     慢性副鼻腔炎をはじめとする鼻副鼻腔疾患への内視鏡手術 (以下 ESS) は一般的になっている. しかしながら良性疾患の術前診断のもとに ESS が行われ, 術後に悪性腫瘍と判明するケースも存在し, 患者に不利益を発生させている可能性がある. 今回われわれは, ESS 術後に悪性腫瘍と診断された症例を対象に, 術前における特徴的な所見を見出すことができるのかを探索する目的で後向きに患者背景・術前検査の有無・所見について検討を行った. また鼻副鼻腔悪性腫瘍は片側性病変として指摘されることが多いため, 片側性病変の術前検査の取り扱いについて当教室の関連病院に勤務する医師に匿名でのアンケート調査を行ったので併せて報告する. 対象は2001年1月から2016年12月の間に, 大阪大学医学部附属病院を受診した鼻副鼻腔悪性腫瘍患者のうち, 当院以外で実施されたものも含む ESS で術中または術後に診断がついた15例とした. 今回の結果において, 術前の MRI は8例, 生検は5例のみでしか実施されていなかった. MRI に関しては全例でT2強調画像での低信号領域という共通性を見出すことができた. この点に着目し悪性腫瘍が疑われる場合には生検を実施するべきであると考えられた. またアンケート調査での結果からそれらの検査の必要性が十分に認識されていないことが示唆された. 今後, 片側性副鼻腔病変の診療における生検, MRI の重要性を啓発する必要がある.

  • 片岡 祐子, 野田 実里, 大道 亮太郎, 清水 藍子, 假谷 伸, 西﨑 和則
    2018 年 121 巻 7 号 p. 905-911
    発行日: 2018/07/20
    公開日: 2018/08/01
    ジャーナル フリー

     骨吸収抑制剤であるビスホスホネート製剤 (以下 BP 製剤) は, 癌骨転移や骨粗鬆症治療に使用されているが, 重大な副作用として骨壊死や感染が挙げられている. 好発部位としては顎骨や大腿骨が代表的だが, 近年外耳道骨壊死も報告されており, 2016年 BP 製剤の薬剤添付文書に重大な副作用として追加記載されるに至っている. 今回われわれは BP 製剤長期投与後に両外耳道骨壊死に加え, 右外耳道―顎関節包瘻孔を合併した1例を経験した. 外耳道骨壊死は世界的にみてもまだ症例数は少なく, 骨壊死の機序や臨床像, リスク因子, 治療法等明らかになっていない点が多く, 今後症例数の蓄積により早期診断や適切な治療が可能となることが期待される.

  • 島貫 茉莉江, 戸塚 大輔, 中原 奈々, 佐藤 陽一郎, 今西 順久
    2018 年 121 巻 7 号 p. 912-920
    発行日: 2018/07/20
    公開日: 2018/08/01
    ジャーナル フリー

     頸部外傷の中でも, 特に気管損傷は気道緊急疾患で迅速な対応を要する. また早期に診断・治療がなされなかった場合, 急性期には皮下気腫の増悪や呼吸障害の出現, 長期的には瘢痕性気道狭窄が生じることがある. 当院で最近経験した3例の鋭的気管損傷例について報告し, その診断・治療について検討した.

     3例いずれも刃物による頸部刺傷に起因し, 受傷機転は自傷1例, 他害2例で, いずれも緊急手術にて気管損傷を確認・閉鎖し, 気道の後遺障害を残さず治癒した. 術前に創部触診で気管損傷を直接触知し得たのは1例のみで, 診断にはそのほかの間接的臨床所見が重要と考えられた. 皮下気腫は全例に認められ, 非特異的ではあるが過去の報告に一致して高頻度であった. エアリークは2例に認められ, 気管損傷を強く示唆する重要な所見と考えられた. CT では気管損傷を疑う所見を2例に認めたが, 損傷の部位と程度の評価は困難であった. 損傷部位は他害の2例では胸部気管に位置していたが, いずれも経頸部アプローチにて閉鎖可能であった. 過去の報告を踏まえると, 他害例や胸骨上切痕部に皮膚切創がある場合には胸部気管損傷の可能性を考える必要がある.

     鋭的気管損傷においては, 臨床所見および画像診断を合わせても確定診断のみならず損傷の部位や程度の評価に限界があることから, 疑われる場合には, 全身状態が許されれば創部の十分な展開による診断と評価および閉鎖術が勧められる.

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