日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
アンチエイジングへの挑戦
歯・口腔領域におけるアンチエイジング対策
財津 崇川口 陽子
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2018 年 121 巻 9 号 p. 1139-1145

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抄録

 歯や口腔の機能として, 咀嚼, 発音 (発声), 審美性等が挙げられている. したがって, 歯の喪失は栄養や健康状態, 社会生活, QOL に大きな影響を及ぼす.「よく噛んで味わいながらおいしく食事を摂り, 人々と楽しく語らい, いつまでも笑顔で生き生きと暮らす」―このような生活を実践するために必要となる歯・口腔の健康を守ることは, アンチエイジングのための基本事項である. 歯・口腔領域においては, 生涯にわたって自分の歯を維持すること, すなわち歯の喪失防止がアンチエイジング対策の中心となっている.

 永久歯の数は第三大臼歯 (智歯) を除外すると28歯である. 20歯以上の現在歯を保有していると義歯を使用しなくてもほとんどの食品を咀嚼できるという疫学調査の結果をもとに, わが国では行政および歯科医師会等が連携して, 8020運動 (80歳まで20歯以上自分の歯を保とう) を実施している. 栄養摂取の基本となる咀嚼機能を考えると, 現在歯数だけではなく, 上下顎の臼歯部の咬合状態に注目することも大切である. 喪失歯が多い人や欠損部を補綴していない人には咀嚼機能を維持するために補綴処置を受けるよう, 積極的に助言していくことが必要である.

 さらに, 歯の研磨やホワイトニングを行って歯を白くし, 矯正治療を行って歯列不正や咬合異常を改善して顔貌の審美性を改善し, 口臭予防対策を実施してさわやかな息でいることも, いつまでも若々しくいるためのアンチエイジング対策の一つである.

 日本人が歯を喪失する主な原因はう蝕と歯周病の二大歯科疾患である. これまでの研究からフッ化物の応用, 歯間部の清掃, 禁煙, 適切な食生活, 定期歯科健診等は, 歯科疾患の予防に効果があることが判明している. 若いときから歯・口腔の健康に注意し, 自分で行うセルフチェックとセルフケア, また歯科専門家が行う定期健診とプロフェッショナルケアを継続して受けることがアンチエイジング対策として重要である.

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© 2018 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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